法律のいろは

生活費(婚姻費用)の負担と負債

2014年9月2日 更新 

 前回住宅ローンと生活費〈婚姻費用)の話について触れました。収入の少ない側から別居後に生活費を負担してほしいと言われた際に,自分には負債(借金)があって苦しいのだから基準よりも低い金額の負担にしてほしいという考えが出てくるかもしれません。そうした話がいざ調停等の場で通るものなのかという点について,少し触れたいと思います。

 

 まず,現実面で言えば婚姻費用を調停あるいは審判で決めても,支払いがない場合には給料等の差押によって回収するしかありません。回収するものが分からないあるいはないという場合には,現実に決まった分のお金を手に入れるのは難しいことになります。

 しかし,負債があるから厳しいといえば,算定式や算定表よりも生活費〈婚姻費用)の負担が軽くなるかといえば,そう簡単なものではありません。算定式では,あくまでも夫婦双方の収入から基礎収入を計算して,支払うべき生活費の額を決める(計算する)のですが,ここでは負債が考慮はされません。負債の支払いを収入から当然にひくわけでもありません。借金の原因も色々とありえますが,特に遊び等いわゆる遊興費と呼ばれるもので借金を負った場合に,差し引くのは難しい話です。理屈から言えば,借金が自分と同等の生活を保障しようという精神から,負担するようにとされる養育費や生活費(婚姻費用)よりも借金の支払いが優先されることはないのです。

 

 とはいっても,別居以前に夫婦の生活をする上でやむを得ず借りた借金まで同様に考えるのも問題があるところです。こうした場合には,生活費〈婚姻費用)を貰う側にも支払いの負担を少し負ってもらうということは理由がある話しです。割合に応じて按分するという方法が一つの方法として考えられます。どのような割合にするのがいいかはケースバイケースかと思われますが,按分のやり方も複数の方法が考えられるところです。

 このように,借金の負担があるからといっても,生活費〈婚姻費用)の金額を決める場面では,そこまで重視はされないという点には注意が必要です。現実にお金を得ることができるかは支払い能力(差し押さえができるものがあるかなど)も一つの要素になってきますが,こうした点をどう考えるかはその方ごとのケースでの考慮が必要になるものと思われます。

 

 

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