法律のいろは

保険金と離婚の際の財産分与(その②)

2015年1月11日 更新 

 離婚の際の財産分与と保険金などの関係について,前回生命保険金の関係と交通事故で遭った被害に対する損害賠償がどうなるのかについて触れました。このうち,後者については,裁判例の紹介をしていたのが途中になりましたので,この続きからです。

 前回のおさらいを兼ねてですが,問題となったのは夫が結婚中に交通事故に遭い,後遺症が残る状況で加害者から貰った損害賠償(加害者の加入している保険会社から保険金として支払われたもの)が,財産分与の対象になるのかどうかです。前回も触れましたが,こうした損害賠償にはいくつか性質の異なる項目があり(前回事故でけがを負ったり・後遺症が残ったことへの慰謝料と収入減少について触れています),その性質によって変わってくるという話をしました。

 ポイントとなるのは,問題となる項目を取得するのに,配偶者(先ほどの事例では妻)の貢献があったと言えるかです。慰謝料は,事故の被害者(先ほどの事例では夫)が被った苦痛を埋めるためのものであるのだから,配偶者の貢献がないという理由で,財産分与で清算する対象にはならないと裁判所は判断しています。

 これに対し,収入減少分は,先ほどの事例にあわせると,夫が外で働くことで収入を得るのは妻の支えがあるからだということで,妻が貢献したものと考えて,財産分与の対象としています。交通事故の話になりますが,こうした収入の減少分は大きく言って次の二つに分かれます。
一つ目は,治療によって症状が大きく改善することが望めないと考えられる症状固定時以前に現実に収入が減った部分(大ざっぱに言って,休むことで収入減が生じた部分)で休業損害と呼ばれるものです。二つ目は,将来的に後遺症が残ることで収入減が見込まれると考えられる部分で逸失利益と呼ばれるものです(ここでは死亡を前提としていません)。二つ目の話は,離婚をすることで将来は貢献しないのではないかと思われるところです。たしかに,離婚した後は貢献をしませんので,その部分は除く必要が出てきます。逸失利益は将来的な減少分を今現在もらうことにおきかえて現在もらうことになりますので,この点も考慮して金額を考えていく必要が出てきます。

 実例では,症状固定の日(後遺症扱いになった日)から284日で離婚をしたため,この部分の逸失利益を考慮しています。裁判例で書かれた話からは,月収51万5600円で後遺症による減収の率が67%とされていますから
 51万5600円×12→年収
 年収×0.67(減収率)⇒減収額
 減収額×0.9524(ライプニッツ係数,将来1年分貰うものを今貰うと考えるための調整)×284÷365⇒284日分の考慮
という事で計算しています。

 次回に続きます。

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