法律のいろは

一旦離婚合意し多額の離婚給付金を得たあとの生活費請求は認められるでしょうか?

2015年2月1日 更新 

 これまで、離婚成立までの生活費(婚姻費用)のお話については様々な形で触れてきました。

 復習になりますが、婚姻費用は夫婦である以上、同居したがいに協力・扶助しなければならないとする民法の規定の趣旨から、それまで(同居時)生活費を負担してきた夫婦の一方に対して、もう一方とその間の未成年の子どもが生活を維持していく上で必要な生活費を支払わせるのが妥当という考えから、支払を求める権利があるものが他方に対して支払を求める、というものです。

 それでは、一方が仕事をしていて稼ぎがあり、他方は無職・あるいは収入が少ない場合、常に無職・あるいは収入が少ない側は他方のより収入がある者に対して生活費を払えということができるのでしょうか?今回はそんなケースが問題になった事案を取り上げてみます。

 このケースは本コラムの題名にちらっと入っていますが、一度離婚については合意に至ったという夫婦です。その際に、他方が離婚届にサインをし、一方が離婚にあたってということで他方に多額(1000万円単位です)の支払を行ったところ、他方から離婚届の不受理申出がされていて、離婚届が受理されませんでした。その後、生活費の支払義務者が上記のまとまったお金の支払をしていることも踏まえ、大幅に生活費を減額したところ、権利者が婚姻費用分担請求の申立をしてきたというものです。

 ここでのポイントは一旦離婚の合意ができて、多額の金員がすでに支払われていること、離婚については争いなく、あとは金額的な折り合いの調整にすぎないこと(なのでお金を払った側に返還を求める理由がないと思われること)、お金を受け取った側もすでにお金を使っていて、今後も特に使うにあたり制限がないことにあると思われます。

 先に述べたように婚姻費用の支払は無収入、あるいは収入がより少ない配偶者と子どもの生活保障にあるところ、すでにまとまった金額の支払を受けていて、それが使えない理由もないのであれば、さらに生活費を支払う必要はない、と判断されました。婚姻費用の支払の意味からしても自然な結論ではないかと思われます。

 今回のケースではかなりまとまった額の支払を義務者が行ったというものですが、たとえば100万円とか200万円というやや中途半端な金額の場合はどうでしょうか。生活状況(未成年者の人数を含め)によっては、100万円、200万円では半年、1年持つかという場合もあるでしょう。そういった場合には、婚姻費用の支払申立が認められる可能性が十分あります。

 

 

 

 

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