法律のいろは

離婚と財産分与(不動産を分与する場合の税金の問題①)

2015年3月9日 更新 

 離婚の際の財産分与の場合で気を付けておきたいのが税金の問題です。今回は,自宅土地建物について,住宅ローンがない前提で夫が妻に分与する際の税金の話を考えていきたいと思います。

 まず,分与をしたほうの側(先ほどの例では夫の側)にどのような税金が発生するのでしょうか?分与をした方の側には譲渡所得税の課税の可能性があります。分与した際の自宅土地建物の時価を収入金額として課税されるかどうかを考えていくことになります。意外かもしれませんが,これは財産分与をすることで分与をする義務を果たしたという経済的利益の対価が不動産時価であると考えているためです。実際には,特別控除のおかげで課税されるケースはそこまではないかと思われますが,先ほどの時価ー取得に要した費用の計算でプラスがあれば,課税が問題となってきます(厳密には,譲渡費用や控除などを考えていくことになります)。この計算からもわかるように,購入時よりも時価が下がっている場合には,課税は問題となりません。課税の計算は,分与をした年の1月1日で所有期間が5年を超えるか否かで変わってきます。

 控除については,居住用の不動産を分与する場合には,前記の所有期間の長さに関係なく3000万円を控除できる制度があります。先ほどのケースでは,自宅土地建物で居住用不動産であることが多いでしょうから,子の控除が使えることが多いです。そのため,自宅土地建物が現在2000万円・購入時1000万円・譲渡費用が無視できる前提でも,(2000万円―1000万円)ー3000万円<0ですから,所得税の課税はないことになります。

 課税に気を付けないで,財産分与の契約を夫婦間でしていたものの,後で課税を指摘されたために,契約が無効でないかが問題になった裁判例があります。これは離婚にあたり多くの不動産を分与したものの,分与した側が自らに課税されないことを前提にしている一方で,分与を受ける側が課税を気にして気遣っていたというケースです。
 このケースで,課税されないと勘違いしていた側が救済されるかが問題になるところですが,分与を受ける側も課税を気にしていて,課税されるなら分与を受けない事柄であることは双方が認識していたことを理由に,向こうの主張を認めています。このことは,単に課税されないあるいは金額を勘違いしていたら,救済されるのではないと考えられる点には注意が必要です。むしろそうした場合は,もらう側の言動や認識などにより限られた範囲になるものと考えられます。

 税金についても注意をしておきたいものですね。次回に続きます。

 

 

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