法律のいろは

内定と取消について(その①)

2015年3月31日 更新 

 卒業から入社・進学の時期になりましたが,先だっても(数年前も)問題になっていた内定と取消について,今回は触れていきたいと思います。今年は大学卒業予定の方の就職活動は少し遅くなっているようですが,同様の問題は続くものと思われます。

 このところ内々定といわれるものの問題も出ているところですが,有名な裁判では,内定の実態はさまざまであるものの,問題となったケースでは,採用内定の通知によって雇用契約は成立するけれども,内定を出してから実際に入社するまでの期間があり,その間にやむをえない事情等があれば解約することがありうるといいう特別な形の契約と判断しています。その後,一般に採用内定については,こうした形であると理解されています。また,通常はいわゆる新卒新入社員を念頭にした判断ではありますが,中途採用者についても同様に当てはまると判断した裁判例があります。

 ただ,内定という言葉イコールでこうしたことが言えるわけではなく,先ほどの裁判例があくまでも事実関係から見て言えるかどうかを述べていることから,どのような事実関係があったかが重要になってきます。少なくとも内定によって当該学生(あるいは中途入社の予定を持っている方)が,他社で働く機会がなくなったかどうかという点が必要になります。内定の通知と誓約書を出すなどの事情からこのように言えたかが一つのポイントになるものと思われます。最近時々見聞きするような何社もの「採用内定」を得ているような状況では,このようには言えませんから,こうした「採用内定」では先ほどの一般的な「内定」の性質と考えられているものがそのままあてはまることはないものと考えられます。

 今年のように就職活動時期が遅れる前には卒業の1年以上前に就職活動などが行われ着た時期がありました。その中では,正式な内定通知はまだ後なのだけれども,採用内定の通知と入社の承諾を受けていたようなケースもあります。問題となるのは,この性質が何かという点で,いわゆるリーマンショックの頃に問題となった取消に関する裁判で争点の一つになったものでもあります。こうした争点のある裁判の中で,こうした通知は,「内定」という労働契約の成立したものではない(内々定というものが内定と異なる点)ものと判断しています。ただし,問題となった裁判例でのケースでは先ほどの通知から4カ月余りが経過し,正式な内定通知まで2カ月程度になった時点での内々定取消について,その会社で働くという期待が法律的に保護するだけ高まっていると判断して会社の内々定取消についての損害賠償を認めています。こうした点からすると,内々定では,状況によって損害賠償の問題が生じる程度であると考えていくことになると考えられます。

 次回に続きます。

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