法律のいろは

内定と取消について(その②)

2015年4月2日 更新 

 前回は,内定とはどんな状態なのか・内々定とはどんな状態で内定と法律的にみてどんな違いがあるのかという話について触れました。今回は,内定の取消がどんな場合について可能かという点について触れていきます。

 まず,内定というのは,始期のある・解約権が留保された雇用契約であるという話を前回触れました。こういう話からすると,内定の取消というのは,留保された解約権が法にのっとって行われたのかどうかという問題であると考えることが出来そうです。これは,解雇の場合とは異なって認められていることからすると,通常言われているところの解雇よりは広く認められることになると考えられます。
 それでは,その範囲がどの範囲なのかというところが問題になってきますが,有名な裁判例では一般論として次のようなことを言っています。それは①採用内定当時会社が知っていないし,知ることが期待できない事柄が取消事由であること②その事由が,解約権が留保された目的などからして,客観的に合理的かつ社会的に是認されること,というものです。

 ①はともかくとして,②だけでは抽象的すぎて分かりにくい点がありますので,具体的に考えていきます。会社の経営難が採用内定後に生じ,それが予期できない事情であった場合はどうでしょうか?こうした場合には,やむをえない事情でしょうから,②に該当することになろうかと思われます。同様に学生側の就職が難しい事情としての,いわゆる留年をしてしまったケースについても,就業が困難であることが通常でしょうから,②に該当することになるでしょう。同様に,内定者側の心身の不良によって,就業が難しくなったような場合にも該当することになろうかと思われます。ただ,就業が難しいかどうかには慎重な検討が会社側には必要でしょう。
 体調不良ではない,妊娠や育児に関する休業などを理由に内定を取消できるかどうかは裁判例はありませんが,法律上,こうしたことを理由に従業員に不利益な取り扱いをすることは禁じられています。そのため,内定の取消を行う事には大きなリスクを会社側に伴うものと考えられますので,他の措置で対応可能かどうかの検討を相当行う必要があると思われます。

 このほか,よく問題になる事柄として,就職試験にあたって会社側に提出した書類に記載がなかった事項や虚偽の記載事項があった場合に,この事を理由に内定を取り消すことができるのかという問題があります。この事柄については次回に触れたいと思います。

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