法律のいろは

子供の引き渡しを緊急に求める場合

2015年4月22日 更新 

 子供の引き渡しを緊急に求める方法としては,人身保護法に基づく請求の他にこの引渡を求める審判が存在します。後者を選ぶ際に緊急せうぃがあるからという事で急ぐ場合には,審判前の保全処分の申立てを家庭裁判所にすることができます。こうした申立はどのような場合に認められるのでしょうか?

 審判前の保全処分とは,その名のように家庭裁判所の判断が出てからでは子供の引き渡しという目的を達成することに困難が生じる可能性が高いことから認められる緊急の手続きです。ですから,こうした申立をして認められるには,こうした保全処分の申し立てを行うだけの必要性・緊急性が必要となってきます。こうした緊急性・必要性について,法律上は申し立てが認められた場合の引き渡しが困難になる場合・子供の等に緊急の危険が迫るのを防ぐのに必要な場合と書かれています。こうしたことから,考慮される事情はケースによって様々なものの,引き渡しを求める子供の事情も考慮されることになります。

 ではどういった場合がそういった事情があるのかが問題になるところですが,子供にネグレクトを含む虐待がなされている場合は少なくとも該当します。その他,子供が現在の養育監護状況では大きな不安定な状態に置かれているような場合(情緒不安定の程度が大きい場合)には該当するものと思われます。また,裁判例からすると,子供を現在の生活環境から連れ去ったような場合にも該当するものと考えられます。

 また,審判前の保全処分は仮の手続きではあるものの,引き渡しという本来的な目標をとりあえずは達成するものですから,こうした緊急性や必要性は大きなものが必要(これは事情だけでなく裁判所に相当の根拠・資料に基づいて示されることも必要)となります。前提として,子供の養育や監護を他方の親よりも適格に行うことができる必要があります。これは,子供の成長などの視点から見て適格といえる必要がありますが,引き渡しを受けた側が子供の養育や監護を行っていくのだから,当然に必要な事情であり,こうした事情も相当の根拠をもって裁判所に示していく必要があります。こうした事情については,既にこれまでこのコラムでも何度か触れてきたものですが,双方の親の事情や子供の事情等様々な点が考慮されます。

 こうした点をクリアして初めて子供の緊急的な引き渡しが認められることになります。次回に続きます。

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