法律のいろは

持戻免除の意思表示とは?

2015年5月6日 更新 

 亡くなった人(被相続人)から、相続人が遺贈を受けたり、あるいは結婚の際などに贈与を受けた場合は、遺産に、遺贈や贈与を受けたものの価額を足したものを相続財産とみなしてから、具体的相続分の計算をしていくことになることは、これまでにもお話しました。ちなみに,国庫での具体的相続分を考えたうえで実際の財産の分配を感がる際に考慮する内容と相続税の計算を行う上での考慮内容や評価額(贈与されたものの金額)については異なります。詳細は別のコラムで触れますが,遺産分アイでの調整(特別受益)の対象となる贈与は相続開始前いつ行われたのか問題になりませんが,相続税の課税上は相続開始前3年のみです(それ以前の課税は贈与税のみ)。また,評価額も遺産分配での調整(特別受益)は相続開始時の金額であるのに対し,相続税では贈与時の金額(値上がりなどがある場合には異なります)となります。
  
 この、一旦遺贈や贈与を受けたものを、遺産の中に繰り戻すことを「持戻」といいますが、一定の場合には、この持戻を、被相続人自身が免除する意思表示をしているときがあります。
 これを、「持戻免除の意思表示」といいます。

 この持戻免除の意思表示は、被相続人が明示的に示している場合でも、他の事情(生前贈与・遺贈の同期や背景など)を考慮してその意思が黙示的にうかがわれる場合でもよいとされています。

 では、どういった場合にこの「持戻免除の意思表示」が認められるのでしょうか。
 ある裁判例では、黙示による持戻免除の意思表示を認めるには、一般的に贈与相当等の利益をその相続人に、他の相続人より多く取得させるだけの合理的な事情が必要としています。

 持戻免除の意思表示が認められるものとしては、
・家業(農家など)を継がせるため、特定の相続人に対して、相続分以外に農地などの不動産をまとめて相続さ  せる必要がある場合
・被相続人が生前贈与との見返りに利益を受けている場合
・相続人のうちの1人が病弱などのため、自立して生活することが困難なことを考慮すると、相続分以上の財産を 贈与する理由があること
・相続人全員が贈与や遺贈を受けている場合
 があります。

 意外と多いのが、上記の一番最後の、相続人全員が何らかの形で贈与や遺贈を受けている場合ではないかと思います。

 実際上は、この「持戻免除の意思表示」があったと認定して、生前贈与や遺贈を遺産に戻さずに具体的な相続分を計算することが相続分を考える上でことは遺言など明確な事柄がない場合には簡単には行われません。相続に関する法律の改正により,20年以上結婚した夫婦の間における居住用不動産(自宅など)を贈与した場合には,調整不要という意思表示があったものと推定(逆の話が証拠上残っていたと調整を求める側が示す必要あり)されると規定されています。贈与税における特例の対象(2000万円までを非課税部分(暦年贈与を念頭にすると110万円)に加えることができる)と似た規律になっています。贈与税については,居住用不動産を購入するお金の贈与(購入は必要)についても対象となっています。似た規律といっても意味合いが異なる制度となっていますので,当然に連動するわけではありません。

 

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