法律のいろは

被相続人の預貯金が使途不明であるとき特別受益と評価できますか?

2015年5月8日 更新 

 相続人のうち、1人が亡くなった人(被相続人)の財産を管理していて、いざ遺産を分ける段になって、被相続人の預金通帳の履歴をとってみると、使途不明金が多額にあったがどうすればよいかというご相談をしばしば受けます。

 この使途不明金について、取得した相続人に対する生計の資本としての贈与とみて、特別受益と考えることはできるでしょうか?

 特別受益とみるには、まず当該使途不明金について、被相続人の生前の意思から贈与とみられることが必要です。実際のところ、たとえば結婚資金にあてるようにと被相続人がつねづね他の相続人も含めて話していたとか、何らかの被相続人による生前の贈与の意思がうかがわれるケースはまれでしょう。これは贈与契約書が存在しない・贈与税の基礎控除を超える・減額の特例の対応もなさそうだけれども贈与税の申告などがなされていない・お金の引き出しの金額や頻度に関して説明できない部分が多いという場合が十分考えられるためです。

 ですから、使途不明金を特別受益とみるのは無理があるケースも相当程度あり得ます。特に亡くなった方の亡くなる数か月の間に預金の引き出し限度額(例えば,1日50万円以上)のお金が何度も引き出されている場合には顕著です。

 こういった使途不明金については、被相続人の承諾なく行われていることが通常と思いますので、不法行為あるいは不当利得の問題として、別途遺産分割の問題とは別に民事裁判のなかで解決を図る必要があります。
 
 しかし、実際のところ、民事裁判を別で行うとなると、損失や損害の金額がいくらなのかの主張や反論・証拠の提出には手間が相当かかりますので時間的・費用的な負担などが大きくなりかねません。引き出した相続人と被相続人との関係、引き出した時期、金額、使途などを出来るだけ明らかにしてもらい遺産へもち戻した上で解決を図るということも考えるべきでしょう。

 特に、使途不明金がすでに引き出したと思われる相続人の手元にない場合は、回収の見込みが薄いため、その相続人が遺産を先取りしたとして、残りの遺産分けについてどうするか考える方が現実的なこともあるでしょう。令和元年に施行された相続制度に関する法改正によって,相続開始後に処分された財産(例えば,預金口座凍結前に引き出されたお金)について,引き出した相続人以外の相続人全員が同意をすること・遺産分割協議を行う時点で遺産が残っていること(すべての遺産が処分されている場合は無理になります)を満たしていれば,処分された遺産(引き出し金額)が存在するものとして遺産分割協議を行うことができるようになりました。

 この制度には限界がありますが,先ほどの負担や回収リスクその他を考慮して活用する(そうでない場合でも遺産分割協議での解決を模索する)なども解決手段としてはありうるでしょう。

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