法律のいろは

不倫・不貞行為にあたる場合と慰謝料や離婚理由にあたらない場合はあるのか?(その③)

2015年6月2日 更新 

 前回,双方が離婚原因について有責と考えられる場合について触れました。今回は,実際の裁判例に照らして,こうした場合に離婚請求が一方からなされていて他方が応じない場合の裁判所の判断について触れていきます。

 問題になったケースは,配偶者の一方に家庭を顧みない等の言動があったところ,それに対して,他方の配偶者に不貞が生じるとともに家を出て離婚を求めたというものです。婚姻期間が17年余りに対して,離婚裁判の際の別居期間は9年あまりでした。こうしたケースについて,最高裁まで争われたものですが,第2審では,夫婦関係の修復は困難であることを前提に,そこに至った原因について,家庭を顧みない言動にも責任はあるものの,決定的な原因は,不貞をしたことにあると判断し,有責配偶者からの離婚請求であることを述べています。そのうえで,夫婦双方の年齢や同居期間と別居期間の長さ,子供が成人に達していること,このまま離婚をすることで離婚を求められている側の配偶者が過酷な目にはあわないと述べ,離婚請求を認めています。最高裁でもこうした判断は是認されたものです。

 この判断の中では,どちらが有責配偶者かという点で主に,双方の責任の程度(破綻に至ったことについて)を比べているほかに,有責配偶者の離婚請求が許される事情の考慮の中では双方の責任の程度の比較は,離婚を求められている側にも一因があるという一つの要素としての考慮です。その他,先ほど挙げた要素の他は,子供が離婚に反対しているか・離婚に反対している配偶者が婚姻関係の修復に向けて動いているのか等の要素が考慮されています。離婚を求められている側の有責性もハードルの一要素とされていることから,一方的な有責配偶者からの離婚請求に比べると幾分はハードルが下がったと言えるかもしれません。そうはいっても,様々な事情が考慮されていることから,相手にもそれなりの破綻への責任(先ほどのケースような生活費を渡さない等の言動)があったからといって,直ちに離婚請求は相手が反対しても簡単に認められるわけではない点には注意が必要と思われます。

 次回に続きます。

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