法律のいろは

特有財産が財産分与の対象に入る場合はあるのでしょうか?

2015年6月27日 更新 

 財産分与における清算の対象は夫婦共有財産だけであって,夫婦それぞれが自己の名で取得した特有財産は清算の対象にならないのが原則です。では,全ての場合でそうと言い切れるのでしょうか?

 結論から言えば,極めて例外的ではありますが,特有財産の一部が財産分与の対象となる場合はありえます。それはどんな場合かがここでの問題点です。抽象的に言えば,他方の配偶者が特有財産の価値が減らないように協力したと評価できる場合に,一定の割合が財産分与の対象となる場合があると言えます。

 こうした事情がどのような場合について言える可能性があるのかについて,裁判例で問題となったケースを取り上げたいと思います。夫婦共通の養親の相続に関し,夫婦の関係もあって一方のみに遺産を相続させた(遺産分割協議で財産を取得しなかった)ケースについて,遺産分割で取得をしなかった配偶者は,自分の権利を実質贈与することで相手の財産形成に寄与したと述べて,相続分を限度として財産分与の対象とした例が存在します。

 これはやや特殊なケースだと思われますが,こうした事情が示されていたと評価できないと簡単に財産分与が認められるわけではありません。こうした事情が示されていないとして,財産分与の対象とは認められなかったケースも存在します。
 その一例として,配偶者が相続した土地上に他方が建物を建て事業を営み生活費を稼いでいたこと等をもって,土地の維持等が行われたからという言い分をもとに財産分与の対象に土地も含まれると主張したケースが挙げられます。これに対して裁判所の判断は,特有財産が財産分与の対象に含められる先ほど述べた事情について,「特段の事情」ということで大きなハードルをかかげ,こうした主張を排斥しています。ここでは,事業で得た利益が生活費の源となっていたという事情だけでは,「特段の事情」があるとは言えないという判断がなされており,例外的に特有財産が財産分与の対象となりうるためには相当に高いハードルが設定されていると考えられます。

 とはいえ,分与対象に含めたケースもありますので,実際のところそうした事情があるかどうかは個別の事情を見ながら考えていくことになるでしょう。

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