法律のいろは

遺産の中にある不動産の金額について争いがある場合,評価額をどう考えていくのでしょうか?

2015年7月11日 更新 

 遺産の中にある財産の中で,家や土地などの不動産が大きな金額になるケースは多いように思われます。預金や現金については,そこまで大きく「いくら」あるかが問題になることは,隠しているのではないか等の話がない限りはそこまで問題にはならないような気はします。これに対して,株式で評価に問題のあるものや不動産などについては,場合によって問題になることが想定されます。

 今回は,このうち,不動産について触れていきたいと思います。金額に争いのある場合,争いのある相続人等の間でよって立つ金額に違いああることも考えられるところです。たとえば,公示価格・固定資産評価額や路線価で考えるのか・時価で考えるのかといった場合です。ちなみに,いわゆる田舎の土地であって手売買が難しそうなところでも,固定資産税評価額での評価はするのが通例ではないかと思われます。相続税については郊外については倍率評価(地区によって定められた倍率を固定資産税評価額にかけあわせるもの)や路線価(都市部で場所によってその路線ごとの1㎡あたりの価格が定められています。計算には広大な土地や不整形地・間口が狭い場合など補正をしています)をが使われますが,遺産分割協議の中ではこの金額必ずしも使わないといけないというわけではありません。この場合,厳密に正確な金額を専門家に依頼して算出してもらうという方法も考えられるところですが,遺産分割の話は個人間の紛争ですので,紛争に関わる方同士で金額をいくらとするのかという約束ができているのであれば,その約束が尊重されます。

 不動産鑑定は費用が相当にかかり,物件によってはこの金額が大きくなりかねません。そのため,不動産業者の方に査定をお願いして(建前上は無料になるはずです),業者の間での違いがある場合は中間額で合意をする(売却をして代金を分ける場合には一番高い金額の査定をした業者)ことも十分ありうるところです。不動産鑑定士の方にお願いをして鑑定を頼むことも可能です。

 

 そうなると,一番の問題は,そういった約束ができるような状況であると言えるのかという点になります。より信頼できる基準に基づく金額に寄せて考えるようにする・それぞれの言い分となる金額の中間額とする等,約束に至るまでの話の付け方は色々と考えられるところです。ただし,どの基準がより信頼できるのか・双方の言っている金額の差が大きすぎるような場合には,そういった調整をしていくことが難しくなっていくことがある点には注意が必要なように思われます。

 こういった問題は,遺産分割に関して,本人同士で話し合う場合にも,家庭裁判所での調停という形での話し合いでも問題として出てくることがありうるところです。こうした場合に,家庭裁判所の調停であれば,不動産鑑定士等の専門家が調停委員に入り意見を言うようなやり方もありうるところです。ただし,厳密に調査して金額を算出するわけではない点もありますので,双方の対立が極めて大きいようなケースでは限界が出てくるようにも思われるところです。そういった場合には,厳密な調査に基づく金差額の算出が必要になってくることもありえますが,双方で費用を負担して裁判所の選任する不動産鑑定士に鑑定を行ってもらうことになります。費用は裁判所が定めることになります。同様の問題は,上場されていない株式についても時価は分かりにくいところがあり,株式買い取り請求の場面でのものや財産評価基本通達で定められた内容を用いることを参考に行うといったことがありえます。

メールフォームもしくはお電話で、お問い合わせ・相談日時の予約をお願いします

早くから弁護士のサポートを得ることで、解決できることがたくさんあります。後悔しないためにも、1人で悩まず、お気軽にご相談下さい。誠実に対応させていただきます。