法律のいろは

相続が始まった後に,財産の維持に貢献した場合

2015年7月17日 更新 

 亡くなった方の生前に,仕事の手伝いをした・お金の管理や世話をしたことが遺産分割でどう評価されるのか問題にされることがあります。このことが,遺産を分割するにあたっての取り分といえる相続分を考えるにあたって考慮される「寄与分」というものといえるのかは大きな問題です。寄与分については別のコラムでどのようなものか・何が考慮されるのか・実際に認められる範囲や可能性などについて触れます。

 

 相続の対象となる方が亡くなった後にお金の管理をするなどして財産が減らないように努力をした場合にはどのように考えられるのでしょうか?そもそも,「寄与分」とは遺産分割をする前提として,個別の相続人の取り分を公平の観点から修正するための制度です。亡くなった方の生前にその財産を維持したり増やしたりしたことに特別な貢献のある方に,それに報いるだけの取り分を与えるものといえますので,こうした貢献は亡くなった方の生前,つまり相続が始まる前になされている必要があります。また,遺産の配分の前提としての取り分を決める際のものですから,相続の開始後に評価されるものになります。

 そのため,相続の開始後に遺産を管理したことで減少を防いだとしても,「寄与分」として評価はできません。それでは,こうした管理による現象防止はどのような点で考慮されるのでしょうか?実際に遺産を分割する際には様々な事情を考慮することになります。その際の考慮の一要素として,こうした相続開始後に遺産を管理したことの貢献は評価をすることができます。ですから,直ちに具体的な相続分が増えることにはつながりません。このように,「寄与分」としては評価できないと述べる裁判例も存在するところです。

 ちなみに,寄与分はいつを基準に評価するのかという点についても,寄与分の根拠となる行動があったときではなく,相続が始まった時点(その方が亡くなった時点)となります。寄与分の根拠となる行為があっても,その後に遺産に含まれる財産が減った場合には,「寄与分」を考えて,具体的な相続分が増えると考えることができない点には注意が必要です。

 

 これに対して,相続に関する法改正によって設けられた特別寄与料は少し話が異なります。寄与分との違いは,寄与分が相続人による被相続人財産の維持・増加に対する貢献を公平の点から反映させるものするものである一方,特別寄与料は被相続人の親族の方で相続人ではない方の貢献を公平の点から反映させる(遺産分割には関与しないため,遺産分割の場ではない)性質のものです。

 また,期待される寄与の程度も,寄与分では特別な寄与とされ高度なものが要求されていた一方で,特別寄与料の場合には一定程度のものでよいとされています。具体的にどのような運用がなされるのか注目されるところです。

 

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