法律のいろは

既に支払われた退職金と財産分与における注意点

2015年7月27日 更新 

 一般に退職金は,勤務していた際の賃金の後払いの意味やこれまでの功労に報いるという性格を持ち,基本的には財産分与における清算の対象となります。退職まで期間がある場合に財産分与の対象に含まれるのか・どの程度含まれるのか・どのような清算方法になるのかという点については,特に前2者をこれまで何度か触れました。今回は,既に支払われた退職金についての注意点に関して触れたいと思います。

 既に支払われた退職金が基本的には財産分与の対象になります。例外的にならない場合もありうるのですが,これはそうした退職金の一部などにその支払い趣旨からして清算の対象とは言えないところがある場合です。退職金の支払い方法は色々とありうるところですが,一回払いの方法による場合には,預貯金とされたり,何かしらの財産の購入に使われたり,その他使われることも考えられます。このように,退職金といえどもお金である以上は,様々な形に変わることは十分にありうるところです。

 財産分与で清算を問題にする場合には,そもそもその全額が当然には清算の対象にはならないという点への注意も必要です。そのうえ,財産としての形が変わりますので,こうした財産の状況で清算を考えていくことになります。そのため,預金であれば預金の清算を考えていくことになりますし,不動産であればその清算を考えていくことになります。

 清算の対象となる部分は全額ではなく,勤務している期間のうちの同居していた期間になり,按分する計算となります。ですから,退職金を仮に1000万円とし,勤務期間を25年・そのうちの同居期間を15年とすると,1000万円×15÷25=600万円が清算対象となります。

 先ほど,退職金の中でもその支払いの趣旨からは清算の対象とはならない部分が出ることもあるとの話を触れました。その一例としては,早期退職をした際の退職金の中に,再就職をした際に見込まれる給料の減少分を補てんする趣旨の部分があれば,そこは夫婦が協力して築いたという性質とは異なる部分が出てきますので,財産分与での清算の対象から外れることがあります。このほか,裁判例の中でも,同様に退職金の支払いの趣旨を問題にして,財産分与の対象とはならないと述べたものもあります。

 次回に続きます。

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