法律のいろは

「相続させる」と書かれた遺言での注意点(その②)

2015年7月31日 更新 

 特定の相続人の方に財産を与える方法として「相続させる」との記載がなされた遺言は現状よく用いられていると思われます。ここで「相続させる」と指定された方が,遺言を書かれた方が亡くなられていた場合に生存している場合には問題がありませんが,仮に先に亡くなられた場合にはどうなるのか(孫が引き継ぐことになるのか)という点について取り上げたいと思います。

 まず,こうした遺言をする背景には,相続は「同時存在」が原則であると考えられている点が存在します。これは,相続が発生していた時点で生存している方に生じるものであるという話です。相続開始よりも前に子供が亡くなっていて孫が存在する場合には「代襲相続」というものが生じますが,こちらも孫が生存していることが前提となります。

 「相続させる」対象となる方が事業を引き継ぐなど財産を与える背景があるのだから,その方が先に亡くなった場合には,その子供などに問題となる財産を渡すのが遺言の意味だとして,「相続させる」対象となる方の相続人に「相続させる」という考え方が出てきます。それに対し,「相続させる」対象となる方に注目して遺言がなされる以上は,その方が先に亡くなった場合の意思は含まれないという考え方も出てくるところです。そもそも,「相続させる」対象となる方について「代襲相続」といって,その子供などが地位を引き継ぐと考えていいのかどうか・子供が事業を引き継ぐという点に仮に注目をしていたのであれば,どうなるか分からない孫にまで引き継ぐことを想定したといっていいのかという考えも出てくるところです。

 

 この問題について,裁判例は後者の考え方,「相続させる」対象となる方の相続人が地位を引き継ぐことを原則として認めていません。この理由としては,一般に前者の考え方を遺言の記載からは読み取ることができないことが一番大きいところです。そうなると,この場合に,「相続させる」対象となった方が遺言した方よりも亡くなった際に,「相続させる」対象になった方の相続人に引き継がれるためにはどうしたらいいのでしょうか?ここで述べた裁判例の理由からは,遺言をした方の意思が遺言上で明らかになっている必要があります。すなわち,「相続させる」対象となる方が遺言をした方あよりも先に亡くなった場合には,「相続させる」対象となった方の相続人に「相続させる」という内容を遺言の中で明らかにしておくというのが対応方法という事になります。

 このように,遺言はその記載の仕方に工夫をしないと不必要に解釈を生んだり,意味が判然としないという事も生じかねませんので,作成の場合には注意が必要となってきます。

 

 ちなみに,こうした遺言を残す際に遺留分という権利への対応をどうするのかが問題になってきました。相続税の面での優遇(一部相続人あたりの非課税部分(500万円まで))があることや原則として遺留分などでの考慮がなされず遺産扱いには民事上はならない保険の活用や他の財産を遺言で別の子供に渡すなどの対応があります。令和元年7月1日以降に遺言を残す際には遺留分についての権利調整がお金を支払うことによる調整となってきていますので,遺産を売却することなく支払いができるようにするのか・売却して支払うことも考えるのか(この場合には相続税の問題に加えて,売却時の所得税の問題が出てくる可能性もあります)を考えていくことになるでしょう。

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