法律のいろは

遺留分の意味(その②)

2015年8月2日 更新 

 平成30年に相続に関する法律改正がなされその多くは令和元年7月以降の相続から適用されています。遺留分についても一部改正がされていますが,遺留分の意味については同じです。遺留分減殺請求については名称が遺留分侵害請求に変更し,その性質などに一部変わった部分が存在します。

 遺留分が問題になるのは,遺言や生前の贈与などで遺留分の割合部分が侵害された場合です。また,遺留分の問題が大きくなるのは相続が始まった後に,遺留分侵害(減殺)請求権という事で遺留分に該当する割合での権利を行使した場合です。そのため,遺留分を侵害するほどの贈与や遺言による贈与(遺贈)がなされた場合でも,権利が行使されない限りは,特に問題は起きません。法改正により,遺留分侵害請求がなされても,遺贈や生前贈与の効力に影響が生じるということはなくなりました。ですから,遺留分の問題を起こさないために,相続開始前に話し合いをしておく・遺言で行使しないように求めるというのも,法律的には意味はありませんが,現実的には問題が起きないようにする方法の一つといえなくもありません。そもそも,遺留分を侵害しているのかどうかという計算も重要になってきます。この話は改正の影響を受ける点も一部ありえますが,別のコラムで触れます。

 遺留分の行使が問題なくなるようにするには予め権利の放棄をしてもらうという事も考えられなくもありません。しかし,制度的には,相続が開始される前に権利を放棄するには家庭裁判所の許可が必要となります。許可は,こうした権利を乱用的に放棄させることへの監督的な意味合いを持ちますので,放棄をするという方自身の考えである・放棄をするだけの必要性があって,代償を貰っているという場合になされる傾向にあると思われます。詳しくは別のコラムで触れています。
 なお,遺留分と相続は違うものですから,遺留分を放棄したとしても相続人になることには変わりはありませんので,相続もしないというのであれば,相続開始後に相続放棄もしておく必要がある場合もありえます。

 今,代償の話をしましたが,実際に遺留分の放棄の手続きを取った場合に,その代償となるお金は相続税での課税がなされる対象となります。実際には遺留分侵害を理由にお金を支払った方が,相続税を支払うべきケースでは支払い過ぎの部分について,更正の請求を法定の期間内に行うことになります。これは,相続税の課税がなされるケース(遺産とみなし相続財産から基礎控除を差し引く・財産評価額の減額の適用などを受けても課税が生じる場合)にはその課税の範囲でお金を支払っていますが,遺留分侵害に対応するお金自体は相続で発生したものではないものの,相続税の課税対象となるため,その分を差し引く(遺留分対応で支払ったんのはもらっていない扱いになるため)ことで税額を調整します。遺留分侵害に対するお金をもらえば,そこに課税の可能性が出てきます。もらった側には相続税の申告義務はありませんが,更正の請求がされた場合には,相続税の申告をしないままでいると,国から更正処分(課税がなされる)可能性があります。

 遺留分の権利者と侵害しているとされる方との間で合意があれば,遺贈でもらった財産の一部をお金の支払いに変えて充てること(法律上代物弁済と呼ばれるもの)も可能です。この場合には,相続税とは別に資産を譲渡していることへの課税(譲渡所得に対する所得税)が生じることもありえます。支払うべきお金で譲渡したことになりますから,ここから差し引く取得費(譲渡所得の場合には,譲渡金額ー取得費がプラスになれば課税の可能性があります)についての特例も含めて課税されることになるのかどうか(税率がどうなるのか)が問題になってきます。税金の話は別のコラムで触れます。

 先ほど述べたように,遺留分を放棄した方も遺産分割自体には加わることはできますので,通常遺留を侵害しえた贈与などがなされた場合でも遺産分割がなされる場合には,その手続きに参加することになります。その遺産分割の話の中で,遺留分放棄の代償となった贈与を調整の対象に含めるかという点は問題になりますが,一般には対象となる贈与に含められると考えられています。

 次回に続きます。

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