法律のいろは

不倫・不貞行為にあたる場合と慰謝料や離婚理由にあたらない場合はあるのか?(その⑤)

2015年8月30日 更新 

 不倫・不貞行為が存在しても,夫婦双方に有責性がある場合は,離婚裁判等で慰謝料が発生しないという事をこれまで何度か触れました。一方,不倫・不貞の相手方に対する慰謝料請求は,夫婦関係が破綻した後に関しては婚姻生活の平穏を犯さないために慰藉料が発生しないということはこれまで何度か触れたとおりです。

 それでは,ここでいう破綻とは何かという事が問題になるところです。これは単に別居しただけとか,それまでの夫婦関係があまりよくなかった(一方がそう感じていても,第3者から見てもそういえる必要があります)と思うだけでは不足となります。離婚を口にするということもあるかと思われますが,夫婦げんかの際にその場の勢いでこうした言葉が出ることはありうるため,確定的に離婚の意思を固めたといえるだけの事情が必要となります。

 こうした破綻の時期は,以前時効との関係で問題になるという話をし,そこでも破綻の話を触れました。それだけでなく,そもそも慰謝料の支払い義務が問題になることがありますので,夫婦間で並行して離婚の協議が本格的になされている際には,大きく問題となることはありうるところです。ただし,先ほども述べたように,言い分としてはともかく実際上は難しいケースも存在しうるところです。裁判例で比較的最近問題とされたところでは,いつから不倫・不貞があったのか・破たんの時期がいつかが問題になったものですが,前者については単に不倫・不貞をした配偶者の帰りが遅くなったというだけでは,その時期に不倫・不貞があったとは直ちには言えないと述べています。後者については,別の原因(ただし,これが他方配偶者の不倫・不貞の存在したと考えられる事情)から,不倫・不貞をした側の配偶者が離婚を決意して弁護士に相談をし,弁護士を通じて離婚の意思を示した時点を破綻の時期と判断しています。結論としては,破たん後に始まった不倫・不貞だからという事で,慰謝料の請求は認められていません。

 問題は,離婚を決意しただけをもって破綻と言えるかですが,私見として,これだけでは直ちには破綻とは言えないのではないかと思われます。あくまでも先ほどの裁判例では,不倫・不貞というそれだけで離婚原因となるものがあり,そのことで離婚を決意したことをもって破綻としているだけだと考えられます。

 このように,破たん後の不貞・不倫はそう簡単には言えない可能性がある点には注意が必要です。

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