法律のいろは

遺言内容の実現の意味(その②遺言執行者の業務とは)

2015年8月31日 更新 

 前回は,遺言内容の実現を図ることについて,遺言執行者という存在について触れました。遺言を書く場合に,こうした方をしているケースもそれなりにあるのではないでしょうか?こうした遺言執行者は,遺言で定められた内容の実現のために,登記や管理,書類の書き換えなど様々なことを行います。遺産の目録を作ることや遺言で贈与する場合には,贈与するものを貰う側に引き渡すこと等遺言で決めたことの実現のための広い事柄を含むものです。特定の相続人に対して,遺産の大半や全てを相続させると記載されている遺言を中心に,親族を遺言執行者に指定するものがあります。遺言に指定されたからといって,絶対に遺言執行者にならないといけないわけではなく,就任するかどうかを決めることができます。一度就任すると,先ほど記載した財産目録(プラスだけでなくマイナスの財産である負債も記載)を作成して相続人に交付する・遺言の内容を遅滞なく(すぐという意味ではありませんが,通常準備にかかる期間内に)相続人に伝える必要があります。遺言執行者は報酬を得ることができますが,同時に業務や義務を負っています。遺産に含まれる財産を管理することも含まれます。

 

 業務の中には,遺言で決めた内容を妨害する行為を止めることも含まれます。遺言執行者というものが,遺言で決めた内容を実現するために存在することから,こうした仕事の内容は当然のものとなっています。とはいえ,遺言執行者ではなく,その他の親族(たとえば,遺言をした方の子供)が遺言をした方の財産を管理していて,その一部を勝手に処分したために,遺言の内容が実現できないという事があれば困ります。こうした場合に,こうした処分した(たとえば,売却した)ことは法律上どう扱われるのでしょうか?

 法律上は,遺言執行者が遺言で選ばれている場合には,たとえ相続人といっても,勝手に遺産を処分する・その他遺言の内容を実現することは妨げてはいけないと定められています。ここからすると,法律に違反する事柄は無効と考えられますが,一方では状況を知らずに買い取った側は困るではないかと考えられるところです。そうなると,簡単に無効というのはおかしいという事になります。

 裁判例では,先ほどの法律の定めがあることは,遺言とそれに基づく財産の処分を遺言執行者が実現することが優先されるのだとして,こうした遺言内容の実現に反する事柄は無効であると判断しています。ですから,遺言執行者がいる場合に,たとえば,別のBという方に贈与することになっているツボをAという方が勝手に売却していてもそれは無効になります。ただし,注意が必要なのは,この場合でも,たとえば,買い取ったCという方が別の法律上保護されるような事柄を満たしていた場合には,その方は法律上保護されるという点です。

 先ほどのケースでは,Cという方が,権限に基づいて売ることを信じ,そのことに特段の落ち度がなければ,Cさんはツボの所有者になれるという定めがあります。普通,ツボを持っているAさんが親が亡くなったので相続したツボを売るといわれれば,権限があると信じそのことに落ち度がないことが十分あり得ますので,Cさんがツボを所有する可能性は十分あり得ます。

 このように複雑ではありますが,次回に続きます。

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