法律のいろは

不倫・不貞による慰謝料請求と離婚を余儀なくされたことについての慰藉料請求

2015年10月3日 更新 

 離婚の際の慰藉料請求として,個別の原因についての慰藉料請求(典型例として,不倫・不貞,暴力・DV・モラハラなど)と離婚を余儀なくされたことを原因としたものがあるという話は以前触れました。これらのうち,一方を予め請求した後で再度他方を請求できるのでしょうか?

 通常は,離婚の大きな原因として不倫・不貞,暴力・DV等が存在すると考えられるので,これらとは別に離婚を余儀なくされた慰謝料というものは考えにくいところです。実際の裁判例で次のようなものがあります。

 問題となったケースでは,不倫・不貞のあった配偶者とその相手方に対し,他方配偶者が慰謝料請求(不倫・不貞を理由としたもの)を請求し認められた後に,別に離婚裁判の中で慰藉料請求と離婚請求が行われたものです。補足すると,一度慰謝料の支払いが命じられた後も,不倫・不貞が続いていたというケースの様です。この裁判では,退職金と財産分与も問題になっていますが,今回は慰謝料の関係のみ触れます。

 このケースでは,離婚裁判(不倫・不貞をされた側が請求)での慰謝料の請求は,その前の慰藉料請求と同様のものかどうか・違うとして,慰謝料の支払いを命じられる違法なものか・違法なものだとして損害はあるのだろうか,といった点が問題となりました。第1審と第2審の判断がありますが,いずれも,不倫・不貞を理由とした個別の慰謝料請求と,そうした事柄が続き離婚を余儀なくされたことへの慰謝料請求自体は別のものと判断しています。ただし,第1審では違法であり・損害もあると述べたものの,第2審ではこうした点の否定的な判断がされています。

 これは,不倫や不貞の存在だけでなく,別居等の継続もあり,既に先行する慰謝料請求の時点で夫婦関係は破綻しているといえるためです。明文上は,損害がないことを理由としています。そもそも慰謝料の理由がないような印象も受けますが,一方で実質的には評価されつくしているという判断が背後にあるのかもしれません。

 なお,今紹介した裁判例には退職前の退職金と財産分与に関する判断も含まれています。いずれ紹介したいと思います。

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