法律のいろは

面会交流の拒否は親権に影響を与えるのでしょうか(裁判例の紹介)?

2016年2月16日 更新 

 少し前の話になりますが,面会交流の拒否を子供の親権者である母親がしていたところ,父親側への親権者変更を認めたという裁判例がニュース報道されていました。単に面会交流拒否が親権変更に当然につながるのか・どのような考慮で,こうした結論に至ったのかを簡単に紹介したいと思います。

 以下では,家庭裁判所の審判での認定に沿っての紹介となります。非常に複雑な点がありますので,相当簡略化したうえで,触れていきます。問題となったケースは,夫婦双方が子育てに関与していたケースで,別居後,離婚前のある程度の時期まで交代で子供の監護を行い,その後,離婚までの間母親を子供の監護者とし,父親は面会交流するという暫定的な合意がなされました。離婚に際しては,母親が親権者となり,父親は面会交流を行うという合意がされたというものです。

 面会交流については,子供の抵抗などからうまくいかないことがあり,父親側から面会交流に関する合意の順守を求める手続きがなされたもののうまくいかない状況がありました。その中で,父親側から,親権者の変更・子供の引き渡しの申立てがなされる一方,母親側から面会交流に関する内容の変更を求める申し立てがなされました。

 なお,これらの申立てがなされた後の手続きの中で,試験的になされた面会交流でも,子供に抵抗がある等の事情から,うまくいかなかったという事情もあります。

 裁判所は,こうした子供による父親の拒絶の原因が何であるかの判断をしたうえで,親権者の変更等や面会交流に関する取り決めを変更する必要があるのかを判断しています。拒絶の原因としては,事実関係は複雑な面はありますが,監護している親に対する忠誠を示そうとして,拒否をしていると判断し,母親側の言動にその原因があると述べています。

 そのうえで,面会交流が子供の成長にとって重要であり,特に制限しないとまずい事情がない限り,監護する親は協力すべきであると述べています。
 ・母親側の態度変化をもたらす必要のあること
 ・離婚の際に親権者を母親としたのは面会交流確保に協力するのが前提であったはず
 ・親権者を変更するしか,面会交流確保の方法はない
 ・父親にも子供の養育に関わるようにした方がいい

 等の理由から親権者変更を認めています。ただし,子供にとって母親の元を離れることの負担や母親の監護状況等に問題がないことから,監護者を母親とし,父親側への引き渡しは否定しています。ちなみに,面会交流の条件変更は認められていません。

 こういった判断には,以前からの父親の養育監護への積極的な関わり等も考慮されています。どこまで一般化できるのかという問題はありますが,父親に養育にかかわらせることが適切で面会交流実現の方法の一つとして,親権と監護者を分離した点には意義があるものと思われます。

 ただし,父母間の対立が非常に大きなケースでは,こうした解決方法が直ちに審判に期待する対立の緩和と面会交流の実現につながるのか問題が出てくる可能性も考えられます。
 

 

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