法律のいろは

配偶者の精神疾患や認知症は離婚理由になるのでしょうか(その①)?

2016年3月15日 更新 

 高齢化が進んでいる現在において,配偶者が認知症にかかることは十分あり得ますし,心の病が増えていると言われている中,躁うつ病に配偶者が離婚することもあるでしょう。家族内での支えあいは非常に重要なことですが,介護・看護している配偶者にとって,あまりにも重い負担になったような場合に,離婚理由になるのでしょうか?

 結論から言えば,配偶者が単に躁うつ病にかかったとか認知症になったというだけでは離婚原因とはなりにくいでしょう。こういったことが大きく問題になるのは,離婚に関して話し合いがつかず離婚裁判になった場合であるというのは,何度か触れたとおりです。

 法律上,配偶者に強度の精神病にかかり,回復の見込みがない場合が,離婚原因として挙げられています。通常夫婦の関係に大きな問題が出てくるのは,単に病気にかかったというだけという事は考えにくいので,問題になるのは,病気のよるすれ違いや介護・看護による負担が大きくなってきた時点かと思われます。

 先ほどの強度の精神病の典型例としては,いわゆる統合失調症に配偶者がり患し,その症状が重く,回復の見通しが明らかでない場合が考えられています。この言葉だけでもハードルは割と高い印象があるところです。古い裁判例の中では,病気にかかった配偶者が過酷な状況にならないように,見通しを建てることが必要であることを述べるものもあります。現在も同じようにとはいきませんが,病気にかかった側の今後への配慮は重要な要素にはなるでしょう。

 そのためかは不明ですが,躁うつ病等による夫婦のすれ違いが大きくなったこと等が問題とされるケースが裁判例で現れている限りでは多いように思われます。ちなみに,民法の改正案要綱というものでは,精神病を離婚原因から外しており,こうした疾患に対する差別が生じないようにしていく傾向が見受けられます。

 あくまでも,病気には限りませんが,こうした事情等を踏まえて,夫婦の間に軋轢が生まれたのかどうか・病気にかかった側の今後の生活見通しなど様々な要素が問題になるように考えられます。

 次回は具体的な裁判例を触れていきます。

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