法律のいろは

相続の手続きに時期の制限はあるのでしょうか?

2016年5月8日 更新 

 親や配偶者亡くなって相続をするのだけれども,何かいつまでにしないといけないということはあるかというのは,相続が生じた際に一番初めに問題になることかもしれません。

 

 何代にもわたって土地の名義を変えなくても直ちに問題はない,ただし後で名義を変更する際に大変なことになるという話を以前しました。遺産分割は早く行った方が問題が将来に生じませんが,今しなくてもすぐに問題になるものでもありません。

 

 一方,亡くなった親や配偶者に大きな借金があった場合には,相続放棄をするのには時間の制限があります。相続があったことを知ってから3か月と割と短い期間になります。この間に何もせずに放っておくと借金を相続しないという選択肢が基本的に取られなくなります。そのため,借金があった場合には,一番問題になる相続の手続きであり,時期の制限になるでしょう。

 

 これに対して,借金が亡くなった方に無い場合で問題になるのは,相続税の申告に関する制限です。これは,法律上は相続があったことを知ってから10カ月以内に行うと定められています。相続放棄をした方についても,みなし相続財産(生命保険金など)への課税の可能性があります。また,小規模宅地の特例(一部遺産分割であっても対象となる土地の分割が成立すれば可)・配偶者の税額軽減(遺産分割自体の成立が必要)を活用する場合には,この期間内に相続税の申告を行う必要があります。

 実際には相続があってから10カ月以内に遺産等の調査を終わらせておくことが必要ですが,遺産の範囲に争いがある場合(解決には遺産確認の裁判という相続人全員が参加することが必要な裁判を起こす必要があります)・遺産分割協議の成立が難航する(生前にもらったお金の対応や分割方法・取得する財産でもめている場合など)こともあり得ます。この場合には,相続開始があったことを知ってから(通常は相続開始時と一致することが多いでしょう)10か月以内に相続税の申告(法定相続分で遺産を取得したという内容での申告・債務の差し引きなども法定相続分でされたという内容になります)とともに3年以内に遺産分割が解決しそうであるとする書類を税務署に提出しておく必要があります。

 遺産の範囲まで争いがある場合など対立が大きい場合には,この3年でも解決しないこともありえます。この場合には,やむをえない事情により遺産分割が成立しないことをその根拠ともに説明する書類を税務署に提出し,税務署長からの承認をもらっておく(この時期は先ほどの3年が経過してから2か月が過ぎるまで)必要があります。これらの手続きをしておかないと,相続税がかかる場合の税額軽減ができないことになります(通常は相続税申告を依頼した税理士が対応するかとは思われます)。

 

 平成25年に基礎控除の金額が少なくなりましたので,相続税がかかるご家庭は増えたと言えるでしょう。ただし,各種特例等で相続税の軽減措置が存在していることとこうした特例を使う際の手続きについても注意が必要です。

 

 こうした納税の話についてはいずれ触れる予定ですが,申告と納付は遅れてしまうとペナルテイの対象となりかねません。

 

 このほか,遺言等である相続人に遺産が集中して与えられている場合には,遺留分減殺請求・遺留分侵害請求を考えることもあります。ただし,法律上相続があったことを知ってから1年で時効の主張を相手から受ける可能性が出てきます。この手続きは,遺留分を侵害されている方から侵害している方に権利行使を示せば十分ですが,期間内に行使したことの証拠を残しておくことは必要と思われます。ここは相続に関する法改正後も同様です。

 

 このように,相続が発生した後には様々な手続きを期間制限内に行う必要があります。税金の話は遺産が非課税部分を超える場合の話であり,その他は借金が多い・遺産の分配に大きな問題がある場合の話です。問題等があるのかどうかの把握は早いうちにしておいた方がいいでしょう。

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