法律のいろは

遺留分減殺請求と遺産分割協議の関係(その③)

2016年5月16日 更新 

 遺留分減殺請求をするには期間制限が法律上あるため,遺産分割協議の申し入れのみをその期間にしていたという事であれば,遺産分割協議の申し入れに遺留分減殺請求をしたとの扱いができるかどうかは大きな意味を持ちます。遺留分減殺請求の対象となる遺言について無効を争わなかったケースで,その点が判断されたケースの紹介の続きです。

 

 前回は,相手方が受け取ったわけではないものの,その内容が当時の知識などから知りえた等の事情がある場合に遺留分減殺請求の通知が届いたという法律上の扱いができると裁判例が判断した点を紹介しました。今回は,前回・前々回では触れていない,遺産分割の申し入れに遺留分減殺請求をしたとの扱いができるのかどうかという点についての判断を触れます。

 

 結論として,問題となった裁判例では,第2審の判断を覆して,遺産分割協議の申し入れには遺留分減殺請求をしたとの扱いができると判断しています。ただし,あくまでも,遺留分減殺請求の対象となる遺言等が無効であると争わなかった場合でかつ遺言等によって遺産分割協議を申し入れた方が何も取得できない状況が存在しての話です。しかも,例外もありうる話です。

 

 これは,遺言等で何ももらえない方(遺留分減殺請求ができる方)は,遺留分減殺請求をしない限り確実に遺産から取り分を取得することができないという状態を前提としています。そのため,遺産分割協議の申し入れによって,遺産から何かしらの取り分を取得しようとしている場合には,取り分を確実に取得する意向が示されるのが原則であろうというものです。

 このケースでは遺言で相続分をゼロとされた方からの請求であったので,こうした医師を読み取ることができたという特殊なケースであったというのがここでのポイントになります。

 

 もちろん,自分が何ももらえない遺言等が無効だから自分にも取り分があるはずだという態度に出ているのであれば,こういった意向が示されているとは限りません。そのため,この場合にはこの裁判例で述べたことはあてはまらないと考えられます。

 

 あくまでも遺留分減殺請求と遺産分割協議は制度上全く異なるものであるから,一方の申し入れが他方の申し入れを意味しないことを前提に,重なると判断せざるを得ない場合があると示したものと思われます。

 

 例外にあたる事情は,先ほど述べたような通常考えられる意向を否定するようなものが該当するでしょう。このように,限られたケースの話にすぎませんが,遺産分割協議の申し入れに遺留分減殺請求をしたと扱える場合もあります。ただし,そもそも権利行使の連絡をまず行い,それがうまくいかない(このケースのように届かない場合)の予備的な対応として行うか・裁判を提起することでやや不明確な権利行使の通知が届いた事態に対応するのかを考えて決めておく必要があります。このケースでは,権利行使が不在通知でもなされたといえたのはやはりやや特殊な事情があったという点がありますので,どういった形が一番リスクが少ないのかを検討しておくことも必要でしょう。

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