法律のいろは

認知がなされた後の養育費の支払いは,いつから支払い義務が出てくるのでしょうか?

2016年5月22日 更新 

 法律上,婚姻をしていない状況で子供が生まれた場合に,特に男性側は認知をしない限り法律的な親子関係は生じません。血縁的にみて親子だとわかっていれば,養育費を支払う義務があるのではないかと思われるかもしれませんが,そう簡単にいかない点はあります。それでは,実際に養育費はどの時点から支払う義務が生じるのかが今回取り上げる点です。

 

 問題になった裁判例があります。そのケースでは,子供の生後2年経過しないうちに,家庭裁判所の認知に関する審判で親子関係が生じています。その後なされた養育費の請求に関して,子供の生まれた時点からであると判断しています。

 

 その理由としては,認知の審判が確定するまでは養育費の支払いを求める法律上の根拠がないため,それよりも早く養育費の支払いをするべきという点の問題点をあげています。ただし,あくまでも幼児について,認知審判がなされその直後に養育費の支払いを求めた場合の判断としていますが,出生時にさかのぼって養育費を請求できると判断しています。出生時にさかのぼるとしているのは,認知の効力は子供の出生児にさかのぼるという法律の定めに従っている点です。

 

 ただし,この裁判例では幼児について認知審判が出されて養育費の請求がその後すぐになされた場合に限定されています。養育費の請求がすぐになされることなく何年も経過してからいきなり一気にまとめて請求された場合には,支払えないということにつながりかねません。こうした点を踏まえると,ここでの判断はあくまでも限定されたケースであるように思われます。

 

 もちろん,通常は結婚に至らなかった男女の間に子供が生まれたけれども,認知をしてくれない・養育費を支払ってくれないという事で,子供が生まれてから早い時期に認知の請求や養育費の請求をすることが多いのではないかと考えられます。その意味では,先ほど紹介した裁判例の判断が当てはまるようなケースも多いかもしれません(ただし,あくまでも高等裁判所の判断です)。

 

 とはいえ,何年も親子間の交流も何もないままにいきなり多額を請求されるということもあるかもしれません。その場合には先ほど述べた点もあてはまるでしょうから,同様に考えるのは難しいでしょう。そもそも交流がなかったのにいきなりまとめて養育費の請求をされてもということで混乱が生じる場合もあるかもしれません。

 

 このように,認知によって養育費の支払い義務も生じるけれども法律上は出生時に効果が遡る点はあるけれども,ケースごとの事情によって左右される点もあるというのが一つの傾向と考えられます。

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