法律のいろは

相続と口座からのお金の引き出し(その⑧)

2016年5月27日 更新 

 亡くなった方の持っていた口座からのお金の引き出しなどが問題になケースについて,「使途不明金」や引き出されたお金がどのような意味を持つものかどうかなどについて,これまで触れてきました。仮に,贈与ではなく不正の引き出しを口座通帳の管理をしていた方が行った場合に,損害額(損失額)を請求するのには,時効(消滅時効)があるという話を前回しました。民法の改正が2018年に行われました(時効などの関係部分)が,こちらについては大きくは影響しないものと思われます。

 

 これに対して,贈与を行ったということで「特別受益」ということであれば,遺産分割の手続きの中で配分を調整することになります。この調整については時効は存在しません。もちろん,以前触れました資産状況などに照らしてお金の動きがおかしいという疑念を税務当局に持たれている場合などには別の問題も出てくる可能性はあるでしょう。

 

 通帳を親族などが管理を行い,本人が管理を行えなかった場合をこれまで念頭に置いてきましたが,実際には途中まではご本人が元気である程度お金の引き出しなどに関わってきたことも考えられます。ご本人が関わっていたということであれば,そもそも管理を行った方の引き出しとは考え難いケースも存在します。管理に関わるといっても,ご本人自身がある程度お金を管理できる状態にないと引き出しを行い自ら使ったということが考えにくいということもあり得ます。

 

 こうした点は,亡くなられた口座の名義人の健康状態や通帳の管理状況によっても変わってくると覆われます。実際に,使い込みなどがあったのではないかと疑っている方・逆に疑われている方ともに,こうした点もポイントとなりうる点には注意が必要でしょう。

 

 実際に管理をしていた方がお金を引き出していた場合には,当然ではありますが,お金を出した方がその使い道について何も知らないということはそうはありません。そのため,これまで取り上げてきましたような使い道が何であったのかという話が問題になってきます。亡くなったご本人の費用やその他役に立つ出費であったのか・贈与がなされたのかなどが当てはまります。こう言った点は引き出した側が,どのような用途に使ったのか・贈与であっても経緯を含めて説明が必要になってきます。

 

 仮に,そうした引き出されたお金が使い込みがあったから返してほしいという裁判を起こされた場合,一般には,請求をする側に使い込みの立証責任(証明しないと負ける)があります。しかし,こう言った事情がある場合(預金通帳を相手が管理していた・亡くなった方本人が同意を行うのが難しい・不明なお金の出金があるなどを資料を付けて明示している場合には,本来立証責任がない側に説明が求められることも十分にあり得ます。

 ちなみに,同様の話は親御さんの生前に子どもの一人が財産管理をしていた・その後親御さんやほかの兄弟とお金の使い方をめぐってトラブルとなり,確認を求められるケースでもあり得ます。ここでは親御さんの生存中の話にはなりますが,同意していないお金の使い方が親御さん本人の費用なのかなど(領収証などの裏付けは必要)が問題となります。親御さんの健康状況などにより,成年後見人が調査の上請求を行うのか(おそらく,弁護士の成年後見が選任されることが想定されます)・親御さん本人が請求をするのかという話になるでしょう。ここでの話は相続開始後のこれまで述べてきたトラブルが前倒しになったということができます。

 

 このように,引き出しが管理していた方が行っていたといえる場合には,使途の問題に進みます(これは最後に述べた生前に使途を問われた場合も同じです)。これに対し,実際に引き出したのがはっきりしない場合(本人が引き出した可能性も十分にうかがわれる場合)には,相手に使途を聞いても自分が出していないからわからないという回答があることも十分に考えられるところです(生前に使途を問われた場合には,この反論は難しい場合もありえます)。こうした点のハードルがあることも認識しておいた方がいいでしょう。

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