法律のいろは

遺産の中にある賃貸している家や倉庫の家賃(賃料)は,相続や遺産分割でどうなるのでしょうか?

2016年6月8日 更新 

 亡くなった親が持っていた家や土地を他の人に貸しているというケースもあるかと思われます。土地の上に倉庫を立ててもらって貸しているというケースもあるかもしれません。こうした場合,ふつう家賃(賃料)が生じます。これは,遺言であらかじめ誰かに相続などをさせると定められている場合,遺言はなく遺産分割までの間も変わりません。この家賃(賃料)を相続や遺産分割にあたってどう考えればいいのでしょうか?

 

 遺言が存在する場合には,予めその不動産を取得することになっていた方が貸主の地位も引き継ぎますので,その方が家賃(賃料)を取得することになります。これに対して,特に遺言がない場合には,遺産分割協議が終わるまでは,誰が貸している不動産を取得するのかわからない状況になります。ただ,一方で相続人の中の誰かが管理している場合もあり,その場合の取り扱いは問題になります。

 

 仮に遺産分割とともにこうした家賃(賃料)がだれのものかも決まるのであれば,話し合いがつくまでどうすればいいのかわからなくなるということになりかねません。

 

 遺産分割の話し合いがつくまで,各遺産は相続人の間で共有の状態となります。こうした家賃(賃料)は,共有の状態のものから生じたものではありますが,管理をしている不動産を就役した結果生じるもので,遺産である不動産とは別個のものと考えることができます。そうなると,遺産分割の話し合いによって誰のものになるか初めて決まるというものではなくなります。

 

 最高裁の判断でも,こうした点を述べたうえで,こうした家賃(賃料)等の遺産を集積した結果生じたお金に関しては,各相続人の相続分の割合に従って,はじめから取得することになると判断しています。たとえば,親がなくなり子供3人が相続人で,遺産分割までの6か月の間に遺産の中にあるアパートから合計180万円の家賃収入があった場合には,60万円ずつを当然に取得することになります。

 

 ただし,これは法律の原則であり,様々な事情から相続人の間でこうした家賃(賃料)をだれが取得するかを話し合いって合意をすることを否定したものではありません。このようにして遺産分割協議とともに決着をつけることもできますが,これは相続や遺産分割の話し合いとは純粋には異なるものにはなります。

 また,亡くなった方の口座に家賃が入金になっている形が通常と思われますが,金融機関がその子を知れば口座は一度凍結されます。仮に凍結もされず・家賃などの入金債が同じままであれば,亡くなった方の口座にお金が入金され続けるということも一応はありえます。もちろん,死後の各種手続きとして口座凍結とともに入金先を変更するように借主や管理会社に通知をしておく(この場合には代表となる相続人の口座に入金になることもあるでしょう)ことが多いと思われますが,先ほどの最高裁の判断はまさしくこうしたケースについての判断です。

 亡くなった方の口座に入金されたままということになると,別の最高裁の判断で口座のお金は遺産分割の対象であるから,分割で決着させるという話もありますので,当然に分割された部分との関係(そもそも預金と一体となるためすべて分割が必要なのか)などの問題も出てきかねません。もちろん,すべて話し合いで分ける・家庭裁判所が介在しなくてもできる一部引き出しの制度を使う(そもそもは,この制度の対象は遺産分割の対象である預金のみなので,これでの対応が問題ないのかという話もあります)などの対応がありえます。最終的に話がつくのであればそこまで問題は大きくはならないでしょうけれども,問題の要因は残る点は注意が必要でしょう。

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