法律のいろは

別居前に多く渡していた生活費(婚姻費用)は財産分与でそこまで清算されるのでしょうか?

2016年8月11日 更新 

 離婚前にいわゆる相場(算定表や算定式で決まる金額)よりも多く生活費を渡していた場合には,離婚の際に財産分与で考慮されるという話は以前触れました。このように渡した金額には,別居など夫婦関係が大きく悪化する前のものもあれば,夫婦関係が悪化し別居する際の持ち出し,その後に多くの婚姻費用を様々な理由から渡していたものまで様々考えられます。こういったすべての場合で清算の対象となるのでしょうか?

 

 夫婦関係が円満な場合には贈与の趣旨でなされていることも十分あり得るために,常に清算をしてもいいのかどうかというのがここでの問題点です。一方で,こうしたお金は財産分与の前渡しの性格を持つのだから清算をしないとおかしいという考え方もあり得るところです。こうした問題点について,裁判例の中には清算の対象とはしないというものがあります。なお,ここでの裁判例は最高裁判所レベルのものではないものの,こうした判断も存在するという話になります。

 

 清算の狭める裁判例の判断の中には,清算をするという合意がない限りは贈与の意味でなされたために,返還や清算は不要とする裁判例があります。この判断によると,夫婦関係が悪化した後には,過剰な生活費の負担があれば財産分与の中で生産ができることになりでしょう。

 

 比較的最近の裁判例の中には,第1審の審判で財産分与の前渡しであると判断した判断を変更したものもあります。そこでは,別居中の生活費(婚姻費用)が調停での話し合いか審判という裁判所の判断で決まることに鑑みて,自発的に決めた生活費(婚姻費用)の金額は,夫婦双方の収入や生活状況から見て,著しく不相当といえない限りは,財産分与の前渡しと評価するべきではないと述べています。

 別居後に自発的に渡していた生活費(婚姻費用)の金額が相場(算定表や算定式で決まる金額)よりも多かった点を財産分与で考慮するかも争点となったケースです。

 

 この判断を前提とすれば,夫婦お互いが自発的に決めていた婚姻費用の金額は原則として清算の対象から外れるという話になります。

 今回紹介した裁判例のケースでは,生活費をもらっていた側の就労状況やその他生活状況,渡していた側の収入に占める渡していた金額の割合,渡していた金額が相場(算定表・算定式で決まる金額)から比べてどの程度の金額かを考慮して,著しく不相当といえるかどうかを判断しています。

 このような判断も存在する点には注意が必要でしょう。

 

 

 

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