法律のいろは

身内の身元保証人になった際に,どんな規制があり・負担がありうるのでしょうか?

2016年9月29日 更新 

 配偶者や子供,その他親族がどこかに採用されて務めるようになった場合に,身元保証人になってほしいといわれることがあるかもしれません。保証人というと何となく危なそうというイメージがある一方で,実際どんなものなのだろうかという点はよくわからないところです。今回は,簡単ではありますが,身元保証とはどのようなものかを触れてみたいと思います。

 

 まず,そもそも身元保証とは,先ほどの話にあるように,従業員の方が起こした何かしらのことで会社に損害を与えた場合に,その支払いの責任をってもらうためになされるものということができます。実際に問題が起きるまでどんな支払いの責任が出てくるのかわからない点で,一般に保証人になってほしいといわれる何かのお金の借り入れのようなものとは少し異なる点があります。また,会社に勤務する限りでの話ですので,長期的に支払いの責任が発生するかもしれない点も特徴ということができるでしょう。

 ちなみに,会社に採用されたから身元保証人になってほしいといわれるイメージがあるかと思われますが,採用後何かの不祥事が起きた際にその損害賠償の保証人になってほしいという話も身元保証として扱われます。

 

 身元保証人の責任は,自分が勤務もしていない会社でその従業員の方が起こすかもしれない問題に関わるものですから,気づかないうちに大きな責任を負うことになるかもしれません。それでは大変だということで,法律上規制がなされています。ちなみに,身元保証も会社(債権者)と保証人になる方の合意に基づくもので,保証に関する規制のほかに特別な法律上の規制も設けられています。

 

 ここでは特別な規制について触れていきます。まず,いつまでも自分の知らないところで発生しかねない負担を負わされるのは大変であるということで,保証人の責任を負う期間が限定されています。原則として期間を定めても5年まで,定めない場合には3年とされています。更新できるようにすれば大丈夫だということでは,期間を区切っても意味がないため,更新後も5年までと規制されています。契約書に,本人が勤務している期間ずっととと書いてあっても法律の期間に制限されます。更新の手続きを取らずに当初の契約書のみということであれば,期間の経過後に起きた事柄については身元保証人としての責任は生じなくなります。

 このほか,一定の事柄を会社側が保証人に通知することが義務付けられており,身元保証人が支払うべき金額が問題になった際には,裁判所は様々な事情を考慮してその金額を考慮するとされています。ここでは,会社側の従業員への監督に落ち度があったかどうか・身元保証をするに至った経緯等の事情が挙げられています。また,現在は身元保証人を含む「根保証」と呼ばれる不特定の範囲での支払い義務を負う(身元保証人も負担を負うべき不祥事などがない状態ではどこまで負担を負うのかは不明です)保証契約では,「極度額」と呼ばれる支払い義務を負う範囲を契約時に書面に記載する必要があります(身元保証契約も書面で合意をしないと効力は生じません)。言い換えると,単に全額責任を負うという記載では全く限度額の定めがないに等しいため,無効になります。

 制限額の範囲であっても,どこまで身元保証人が実際に起きた事柄について責任をおうのかについては法令により,会社側の授業員への監督における注意の程度などを考慮して実際の裁判の場面では(支払い請求など),裁判所が制限することもありえるとされています。

 

 身元保証人になった方が亡くなった後には,身元保証人の地位は相続されないのが原則です。ただし,既に確定した支払うべき責任について話が別になってきます。この金額が大きなものである場合には相続放棄をするのかどうかなどを考える必要が出てくることもありえます(熟慮期間と呼ばれる期間制限を超えているのかどうかも問題となることがありえます)。

 

 このように,身元保証人には様々な規制がなされていますが,相手方の態度や信用性,負うかもしれない責任等の事柄を考慮して身元保証人になるかどうかは決めた方がいいでしょう。

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