法律のいろは

一度書いた遺言を変えるにはどうすればいいのでしょうか?

2016年11月29日 更新 

 ご自身で遺言を書いた場合であれ,公証人役場で作成した遺言であれ,遺言書を作った後の事情から遺言を変更したいと思うことがあるかもしれません。そうした場合にどうすればいいのかは,気になるところでしょう。どのような方法があるのでしょうか?

 

 法律上は,いくつかの方法がありますが,一番いいのは新しく遺言書を作り直すことでしょう。遺言自体は一度作ったからといって二度と変更できないということはなく,何度でも作り直すことができます。ただし,作り直す遺言書が法律上要求されている事柄を満たさないと,変えたつもりの遺言が効力が生じず,トラブルが遺言を残した方の死後に起きる可能性があります。

 なお,遺言書を作り替えた場合には,特に前の遺言を撤回したと書いておく必要はありません。ただし,前の遺言が作り直した遺言の内容と矛盾しない部分は,前の遺言が有効とされます。面倒を起こさないためには,前の遺言は撤回したうえで新しい遺言を作ると遺言の中で書いたうえで,新しい遺言書を作った方がいいでしょう。このほかに,撤回変更する部分を明確に示しながら変更をする内容を書いておくという方法もあります。例えば,「○年〇月〇日に作成した〇〇遺言の〇〇という部分を撤回し次の通り変更する。〇〇」という話を書いておくというやり方です。

 

 遺言を変えたのと同様の扱いがなされるには,遺言を作り直す以外に,遺言で書かれた内容と矛盾するような事柄を生前した場合も該当します。たとえば,遺言書で「長男に自宅土地建物を相続させる」と書いておきながら,その後に自宅土地建物を自ら売却してそのお金を他の子供に渡すような場合です。

 

 ちなみに,遺言書を作り替える際に,遺言書を作った方の判断能力などに大きな問題があった場合には,後に無効なのではないか等が問題となり,トラブルになる可能性があります。作り替える際にはこうした点を注意した方がいいでしょう。特に亡くなる直前や病気や判断能力に衰えが大きく,作成の経緯や変更が極めて大きく変更をする理由に大きな疑問が出てくる場合には遺言の有効性が問題になります。ことに作成のころに他の親族をシャットアウトして特定の方が面倒を見ていたというケースでは親族間の疑心暗鬼が起きることもありえます。公正証書遺言は公証人の方が関わるために安全性は極めて大きい傾向にあります(無効となる可能性は低い)が,「口授」と呼ばれる遺言者が真意を伝えるとされるところで意向を伝えたといえるかどうかが問題になるケースもありえます。また,当然のことですが,遺言者の死後に遺言書を作り替えることはできません。また,以前自分で遺言を書いたからといって,新しい遺言も自筆で書かないといけないわけではありません。公証人役場で作成する遺言(公正証書遺言)でもかまいません。逆に公正証書遺言を撤回する場合に,自筆の遺言でも構いません。

 なお,以前も触れましたが,遺言を何度か変更した場合に,最後の遺言を撤回したとしてもその前の遺言が当然に効力を持つことは原則としてありません。ですから,こうした意図を持っている場合には最後に変更した遺言でその旨を明確にしておいた方がいいでしょう。

 これとは異なり,自筆証書遺言の訂正その他の場合には法律上,訂正箇所の明示・訂正したことを書く・押印する等形式面で有効性が問題となる可能性が相当ありえます。法律改正で許容された財産目録のみ自筆でなくてもいいという場合(パソコンで財産目録のみ作った場合等)では訂正の場合には財産目録を差し替える・財産目録に通常の自筆で遺言を訂正する場合と同じく変更箇所の指示と押印が必要となります(変更自体は自筆でなくても可)。
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