法律のいろは

預貯金が遺産分割の対象になると判断した裁判例(その①)

2016年12月20日 更新 

 先日,最高裁判所が,遺産分割に関する判断に関連して,預貯金が遺産分割の対象になるという判断をしました。これまでも遺産分割協議をする際に,預貯金も遺産分割の対象に含めること・分割することに相続人が全員同意をしてきたケースもあると思われます。ここでの判断は,預貯金を遺産分割の対象に含めるという合意が相続人全員でない場合であっても,当然に遺産分割の対象に預貯金が含まれるという話である点に特徴があります。

 

 かなり,大雑把にはなりますが,ニュースにも出ていたこの判断について触れていきます。まず,これまで,預貯金は遺産分割をすることなく当然に相続分に応じて相続人に分けられると考えられてきました。預貯金は数字の残高の存在であると考えて当然に金額は計算により分けられる性質のものであるという前提に立つものです。貸付金や賠償請求権・家賃などのお金を請求する権利の中には,当然に分割されるものと今回これから触れますように性質上分割が当然にはされないとされるものがあります。

 とはいえ,通常金融機関は,筆者の知る限り,遺産分割協議書で預金をどう分けるのか等の記載をしたもの・代表となる相続人が預金の払い戻しにすることに同意をする書類(金融機関で書式のあることが普通です)と印鑑証明書(前相続人)がないと預金の払い戻しに応じてきていないように思われます。

 

 また,預貯金は数字の存在なので他の遺産の分配との調整に使うことができやすいという点もあって,遺産分割の対象に含めるのに便利な点があります。遺産分割の調停などでもこうした点などもあって,相続人全員の同意を得て手続きを進めることもありうるところです。後で触れますが,今回触れる裁判例が出た後預金の仮分割などの制度が設けられました。この制度を使う場合には話が変わる部分があります。

 

 そうした中で,最高裁は,この度,預貯金(外貨を含む普通預金・ゆうちょの通常預金,定期預金)に関して,その性質などから見て,当然に分けられるべきものではないから,遺産分割の対象になると判断を大きく変えました。

 その判断では,普通預金・通常預金と定期預金でそれぞれの性質などに触れながら判断しています。

 

 まず,普通預金・通常預金については,性質上一度開設をすると,払い戻しや入金は自由にでき残高もそれに応じて変動します。口座は同じままですから,残高に応じることなく存在します。こうした口座は,相続が生じた場合でも変わることなく,相続人全員が所持し管理をすることになります。つまり,残高は変動しても同じ口座が存在していることから,当然に分割されるものではないと述べています。

 この点が,普通預金・通常預金が当然に分けられない⇒遺産分割協議を必要とするという大きな理由になると考えられます。

 そのうえで,実際に遺産分割をする上での取り分(相続分)は存在し,相続開始時(遺産分割をするよりも前)に金額を分割しその後の口座残高の変動に応じて分割することもできますが,それでは煩雑になるから好ましくないと述べています。ここは,相続分に応じて分けることも可能ではあるものの,いちいち分けていくことの問題点を述べたものといえるでしょう。

 

 そのうえで,定期預金についても検討していますが,この点は次回に触れたいと思います。

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