法律のいろは

相続における葬儀費用の取り扱い(法律上の話と相続税の話)

2017年4月21日 更新 

 亡くなった方について葬儀をすることが通常と思われますが,通夜や葬儀の費用・香典返し・宗教関係の方への謝礼等様々な費用がかかります。ひとくくりにして葬儀費用と呼ばれるものになりますが,相続の場面でどう扱えばいいのかは気になるところです。以前,法律面の話がある程度触れましたが,今回は税金面での話を含め再度触れていきます。

 

 まず,法律上は,葬儀費用は性質上相続が発生した後に発生するものになりますから,本来的には相続財産での負債にはなりません。この葬儀費用をだれが負担するお金とするのかについてはいくつもの見解の対立が存在します。代表的なものの一つが,葬儀を主宰する「祭祀承継者」(喪主)という方の負担になるというものです。これ以外に遺産の管理のために費用であるとする見解や個別の契約(葬儀会社などとの間の契約)における契約者はだれかという点から個別に考えるとする見解・相続人全員が共同で負担をするという見解があります。裁判例も分かれています。遺産を管理するための費用にもなりませんので,こうした費用として当然に遺産から差し引くことができるものではありません。

 今のべた各種の見解の対立を意識しながらも,遺産分割協議の際にどこからの負担とするのかを話し合っていくことになるでしょう。実際には遺産が相応に存在すれば遺産(相続財産)から差し引き,立て替えになっていれば清算をするという形で解決を形は多いように思われます。この場合には相続人全員での合意形成が必要になります。また,亡くなる直前での亡くなった方の預金口座からの大きな出金の使途が問題になるケースで葬儀費用に使ったという反論(つまり,正当な理由による支払いであるとするもの)がなされることがあります。対立が大きな場合には裁判所の判断を仰ぐ形になりますが,そこまで至るかはその金額などを考えてからになるでしょう。今述べたお金の使途が問題になることがあるので,たちまちお金がないということもあって,亡くなった方の相続財産から葬儀費用を支出する方もおられるかもしれません。いくらかかったのかなどは後でトラブルになるのを防ぐために,資料は保管をして開示はできるようにしておいた方が安全です。この場合には香典や香典返しなどの明細や資料も残しておいた方がいいでしょう。香典の取得や香典返しの負担(さらにいえば,初7日等の費用負担も)についても葬儀費用と似た話が出てきます。

 その後に相続放棄をした際には,通常かかるだろう葬儀費用のほか墓石の購入に,こうしたお金の使い方をしてもその効果が覆されるわけではないと判断した裁判例があります。ただし,形式的には相続放棄ができないとされる「処分行為」に当たる可能性がある点には注意が必要です。先ほど述べた以上にお金を使った場合には,相続放棄ができない状態になる可能性が相当高くなりますので,亡くなった方のお金を使ってしまうことはリスクがある点には注意が必要でしょう。

 

 

 これに対し,相続税を計算する際の遺産額から一定の相続人等が支出をした葬儀費用のある程度のものを差し引くことができます(債務控除と呼ばれるものです)。言い換えれば,相続税の対象から外れるということになります。葬儀費用は本来は相続財産の負担ではないため債務控除の対象ではありませんが,差し引きができる部分があります。詳しくは国税庁の通達に書かれているところですが,主な差し引くことができるという扱いがなされているものは次のものです。

 ・火葬,納骨,埋葬にかかった費用 ・お寺の方の読経にかかった費用 ・死体運搬にかかった費用 ・お通夜をするのにかかった費用

 

 一方,いわゆる初七日・法事のためにかかった費用は差し引くことはできません。香典返しやお墓の購入や永代供養権に関してかかった費用なども同じく差し引くことはできません。相続税に関しては,数年前の制度改正により課税をされる方が増えてきている点もありますので,こうした点を含め税金面の相談も重要になってくるでしょう。もちろん,法律面などからも後でもめないように対策をするのは重要です。

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