法律のいろは

婚姻費用(生活費)の支払い時期と大学等に通う子供の学費などの考慮について判断した最近の裁判例

2017年5月24日 更新 

 婚姻費用(生活費)は多くのケースにおいて,子供を監護している側からそうでない側(もっと言えば女性側から男性側)に別居中に請求さることが多いです。話し合いがまとまれば問題ありませんが,婚姻費用(生活費)の支払いが問題になるのは,夫婦関係が悪化して離婚するかどうか等が問題になっているのが通常でしょう。

 

 そうした場合ですから,本人同士の話し合いで簡単に金額がまとまらないことは多くなり,婚姻費用分担調停等家庭裁判所で婚姻費用(生活費)の支払いをどうするのかの話し合いをすることは多くなります。問題となる多くは婚姻費用(生活費)のそもそもの金額・お互いの収入額(潜在的にこの程度の収入があるはずという話もあります)・住宅ローンを考慮するのか,どこまで考慮するのか・子供の教育費の考慮などがよくある問題です。

 

 今回紹介する家庭裁判所の判断では,支払いの開始時期(審判で支払いが命じられる時期で,この時点からの不払いは差押えの問題が出てくるなど大きな意味合いを持ってきかねません)・20歳に達したけれども大学・専門学校に通う子供の生活費も負担の対象となるか・その学費や住宅ローンの負担を婚姻費用(生活費)の金額を決めるうえで考慮するのかなどが争点となっています。ちなみに,このケースで請求側が妻側であるかどうかは審判の文章だけからははっきりしない点があります。

 裁判所の判断を前提とすると,夫婦双方とも収入のある夫婦について,子供を監護する親側から他方の親へ内容証明郵便で婚姻費用(生活費)の支払いを求め,その翌月に調停の申し立てがあったケースになります。裁判所の判断が出るまで,婚姻費用(生活費)として支払われた部分があり,先ほど触れた点が争点となっています。支払いを求める側は,20歳に達した子供の生活費も婚姻費用に含めるべきで,かかる学費は婚姻費用を考えるうえで増額要素になるべきである等という主張を出している模様です。

 支払いを求められた側は,ここを争うとともに,住宅ローンの負担を自分んしているから婚姻費用(生活費)の金額を下げてほしいという主張を出している模様です。このほか,支払い開始義務を負う時期はいつからかも問題となっています。

 

 多くのケースでは,調停を申し立てた場合には,その申し立ての月から婚姻費用(生活費)の支払いが生じるという扱いがなされているように思われます。しかし,この審判では「婚姻費用の性質と当事者間の公平の観点」から,このケースでは,内容証明郵便を送付した時期であると判断しています。あくまでも,ケースについての判断なので単純に一般化できない点はありますが,婚姻費用の性質という点ではどのケースでも変わりはない点にはなるでしょう。

 次に,20歳に達した子供の生活費の負担もするのかという点について,結論から言えば負担をするという判断をしています。就学中であって生計を営めないことを理由としています。この点も一般化できるのかという問題は残りますが,こうした判断も出ています。

 そのうえで,学費を増額要素とするかどうかという点について

 ①大学・専門学校への進学を支払いを求められている側も承諾していた

 ことを踏まえても

 ②奨学金で学費の9割を賄えること

 ③支払いを求められている側が自分の家賃のほかに支払いを求めている側が住んでいる家の住宅ローンを負担し ている

 ④20歳を超した子供がアルバイトをできるだろうということ

 その他の事情から,増額要素にはならないと判断しています。公平の観点を考慮したものと思われますが,こうした要素の事情はケースによって異なりえますが,どのような変動によって判断に影響するのかは難しい点もあります。詳細は専門家に相談をした方がいいように思われます。

 

 このほか,住宅ローンについては婚姻費用(生活費)の金額に影響を与える要素であると述べ,その金額についても判断しています。

 

 この裁判所の判断では,支払い義務の始まる時期と就学中の成人の子供の生活費をどう考量するか(学費や奨学金とのかかわりを含め)に関して,この通りの内容が他のケースで当てはまるのかという点はありますが,参考になる要素があるものと思われます。

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