法律のいろは

民法改正について(その②)

2017年5月31日 更新 

 前回に引き続き,先ごろ改正案が国会で可決された民法の改正について,少しですが触れていきます。ちなみに,改正案を見る限りでは,改正された内容は改正法が施行された時点からのものに適用になるようです。現時点でいつからの施行か確認できていませんが,どの時点の事柄から適用になるのかは非常に重要な点になります。お気を付けください。

 

 それでは,前回の続きです。前回は,たくさんある改正の項目の中の賃貸借に関して,一部だけ触れました。これまで全くなかったルールが加えられたというよりも,不備のあった部分や裁判例などで判断された点を補充したというのが一言で言えるところでしょう。

 項目は細かいところまで行くとたくさんありますので,ここでは前回触れていない点だけれども主な個所を賃貸借に関してですが触れていきます。

 

 まず,新たに設けられたものの中に,「対抗力」を満たした不動産の賃借人による請求というものがあります。そもそも「対抗力」というのが何かわかりにくいですが,大まかかつ簡単に言えば次のようなものです。法律上権利の競合可能性のある方等に対して自らの権利を法律で定めた内容で示すことで,自分の権利を競合相手に対して主張できるというものです。ものを借りる場合には,借主と貸主の間の約束ですから,貸主以外の方に約束内容に基づく権利を主張することはできません。

 こうした際に,法律で認められた制度である「登記をする」その他一部の借家では「引き渡し受ける」・建物を所有することを目的として合意された借地では「建物の登記をする」ことで,貸主以外にも自分の借りたという権利(賃借権)を主張できるというのがここでの内容です。

 「登記をする」というのは,自分の持っている権利を公にすることになります。

 主に問題となるのは,貸主でもない別の人間が借りている家や土地を勝手に使っているケースや,自分が使えないように妨害しているケースです。こうした場合への対応方法(妨害をなくす)ことは裁判例で認められていましたが,今回の改正で法律上も明確に記載されるようになりました。ただし,あくまでも不動産の賃貸借に関する話になります。

 

 関連して,賃貸人が変更する際の話についても,これまで裁判例で定められていたことが法律に明記されるようになりました。細かな点がありますが,借家の家の所有者が代わった場合に貸主は当然に変わるのが原則であるという話などです。この場合には敷金などは新しい貸主に引き継がれます。

 ちなみに,借主が代わる場合には原則として敷金は一度清算が必要となります。

 

 このほか,貸主が部屋の一部を壊した場合ではなく,大雨などの事情によって貸している部屋が一部使えなくなった場合に,その使えなくなった割合に応じて賃料が当然に安くなるという規定が設けられました。以前は貸主から借主への請求があった場合に安くなるという規定でした。ちなみに改正前を通じて,残った部分では借りた意味をなさなくなるという規定がありました。その原因として,こうした事情のほかに「その他の事由」というのが加えられました。このその他の事由というのがどこまでを指すのかははっきりしないところがあります。

 

 次回から別の部分を触れたいと思います。

 

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