法律のいろは

一度決めた遺産分割協議をやり直すことはできるでしょうか?

2017年9月24日 更新 

 遺言なく亡くなった親御さんなどの財産を相続人で分けるために遺産分割協議は行われます。一度話し合いをしたら後はその内容に合わせて進めていくだけとなりますが,決めた事柄を守ってくれない・もう一度見直しをしたいという考えが出てくるかもしれません。他方,一度決めたことを簡単に覆せるとなると決めた意味がなくなってきます。

 

 まずは,一度決めた内容を見直してほしいと考えた際に,そうしたことはできるのでしょうか?結論から言えば,相続人全員が同意をしていれば一度決めた内容を見直して新たに話し合いをして決めることはできます。逆に言えば,反対する方がいる場合には難しくなってきます。

 これは,一度決めた事柄を一部の方の都合だけで簡単に覆されると決めた意味がなくなるという反面,全員が構わないというのであれば特に遺産分割協議のやり直しを否定する理由がないからです。一度決めた話し合いの合意を解除して新たに取り決めをするという形になります。

 なお,全員がこのように同意をして話し合いをしたと問題なく家れば問題ありませんが,ある行動をもってこうしたやり直しを是認したといえるのかどうかは別の問題になります。明確な合意がない場合に問題になりますが,これは問題となる事実があったのかどうか・その事実をどう評価するのかという問題になります。

 

 これに対して,遺産分割協議で決めた内容を守ってもらえないことを理由に遺産分割協議のやり直しを求めることは可能なのでしょうか?先ほどの話からは,相続人全員が同意をした場合は問題がなくなりますから,そうではない場合がどうなのかを触れていきます。

 少しわかりにくいので,例を挙げると,遺産分割協議の中に,亡くなった方の持っていた土地を相続人の一人であるAさんが亡くなった方の妻の面倒を見るのを条件として引き継ぐことになったケースを取り上げます。実際には,Aさんが条件をどうしても守らない場合に,話し合いをやり直しにできるのかという話になります。先ほども触れましたが,一度決めた事柄を簡単に覆せるとなると決めた意味がなくなります。一方で,決めた内容を守らない場合をどうするのかという問題も出てきます。

 こうした点が問題となった裁判例があり,結論としてはやり直しはできないと判断しています。やり直しによる弊害の他に,一度話を決めた後にはその約束を守るかどうかという問題だけであるというのもその理由となります。

 

 このように,相続人全員が同意したといえるのであれば,遺産分割協議のやり直しは可能です。令和元年7月1日以降にこれまでも行われてきた一部の遺産のみ分割協議をするという方法が正面から定められるようになりました。詳細は別途触れますが,こうした制度も用いてやり直しがないように予め対立がないものや相続税に関する特例を有利に受けられるものから話し合いをつけていくということも考えられます。

 ただし,税務上は問題が出てくる可能性がある点には注意が必要です。相続税に関しては申告期限(相続開始から10か月以内,遺産分割がつかない場合には3年以内に解決するという書類も含めて出すことになります)までに申告の必要があり,一度解決をすると修正申告なり更正を申し出ることになろうかと思われます。その後やり直しをする場合(ここでは相続税の申告後のやり直し)には,遺産分割の合意解除を理由にする場合(要は相続人全員の合意によりやり直す場合)追加での課税(相続税ではなく新しい交換や譲渡に対する課税)の問題が出かねません。前提事項についての想定違いが大きなケースなど取り消しなどの主張ができるケースではこうした話にはなりませんが,証明する資料面の問題は出てきます。この点や内容面での問題への注意も必要になります。

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