法律のいろは

相続した土地に古い時期の抵当権はあるものの,長期間負債の請求が来ない場合の対応とは?

2017年10月9日 更新 

 非常に長いタイトルですが,簡単には次のようなケースを考えてみましょう。親がなくなり,持っていた土地を相続しました。特に使う予定もなく売却も考えています。先日登記簿を見ていると,数十年前に設定された抵当権があるようです。しかし,知る限りではもう10年を超えてその負債の支払いがなされていないようですし,そもそもそうした負債や抵当権があることを知りませんでした。というものです。

 

 ここで問題となるのは,①その負債が存在して支払い義務を引き継ぐのかどうかという点②仮に負債がもうない場合に,登記をそのままにしておくかどうかという点,が考えられます。

 まず,①については,負債の支払い義務を負うのかどうかという難しい問題です。相続放棄をするにしても期間制限がありますし,そもそも負債が存在しないのであればそこまで気にしなくてもいい問題です。次に②については,土地に登記上抵当権が設定されていても,売却などをしない限りはそこまで影響がありません。新たに融資を受けて抵当権を設定しようという場合には少し変わる可能性があります。逆に売却を考える際には抵当権を登記上も抹消しておく必要があります。

 

 負債が存在するかどうかは,支払いの記録(全額支払っていれば,当然なくなっています)を確認してみるのも一つの方法です。また,10年を超える期間全く支払っていなさそうであれば,その負債についての時効が主張できる(その主張に伴って負債がなくなる)可能性があります。法律改正により,貸金についても原則は時効期間は支払い期日から5年で事項になるようになりました(ただし,改正内容が施行された令和2年4月以降イ借り入れの契約をしたものからが対象になります。そのため,古い借り入れについては今も普通は10年を超えていれば事項と考えた方がいいでしょう)。時効についていえば,支払い義務を負債の債権者に認めてしまうと主張できなくなる可能性があるので,注意が必要でしょう。

 勘違いがってはいけないのは,親が借り入れをした方である場合には,抵当権自体が担保している借入とは別に時効で消滅したという主張や法律で定められた抵当権の消滅請求をすることはできないという点です。時効に関して言えば,相続をきっかけに土地を時効で取得したことで抵当権は消滅した党言い分もできません。これらの言い分は相続とは関係なく土地を取得した方については可能です。

 

 抵当権自体はその元となる負債がなくなっている場合には法律上消滅します。また,先ほどのケースでは親との間に抵当権の設定契約の解除を合意していた場合も同様です。ただし,登記は抹消手続きを別に取らない限りは一応残っている点には注意が必要です。この手続きには負債の債権者(抵当権者)から書面を取り付けるか・協力を得られない場合には裁判を起こす必要も出てきます。そこでは抵当権が解除された・支払いか時効によって負債はなくなったから抵当権もなくなり登記も外すべきと主張することになるでしょう。

 

 いずれにしても,古いものである場合には債権者とされる方がどこにいるのかなどが問題になる可能性もありえます。実際にご自身が負債の支払い義務を負うかどうか・土地を売却される場合にはその障害になる可能性もありますので,対応については弁護士等に相談して考えていった方がいいように思われます。

メールフォームもしくはお電話で、お問い合わせ・相談日時の予約をお願いします

早くから弁護士のサポートを得ることで、解決できることがたくさんあります。後悔しないためにも、1人で悩まず、お気軽にご相談下さい。誠実に対応させていただきます。