法律のいろは

夫が養育監護する子供を,妻が保育園から連れ出した事案で,夫からの仮の引き渡しを命じたケース

2017年11月13日 更新 

 妻側が子供をつれて家を出るケースは,事前に夫に告げている・いないにかかわらず多いのではないかと思われます。特に告げていない場合を「無断で連れて出た」として問題があるのかどうかは考え方のわかれるところでしょう。

 一方では,父親の親権(離婚前は共同親権の建前となっています)を侵害しているという考え方・他方で,特に幼い子供は母親が面倒を見ることが非常に重要であるなどの理由からそうした侵害はないという考え方もありえます。筆者の個人的な印象としては,後者の考え方が実際には有力な気はしますが,子供の意思や連れて出る際の態様などの考慮もポイントにはなってくるように考えられます。

 

 今回触れるのは,夫婦の別居後に父親が幼い子供(保育園に通う年齢)の面倒を見ているケースで,面会交流の実施などについて対立があった状況において,妻側が子供を保育園から連れ出したものです。夫側は早期に子供の引き渡し等の請求(緊急の必要性があるとして,すぐに引渡しを求める請求も)をしています。ちなみに,このケースでは,妻側が子供をつれだした後,夫に自分を含めて居場所を明らかにしていないという事情があります。

 

 このケースでは,第1審と第2審で結論が分かれています。第1審・第2審ともに,母親側が子供を保育園から連れ出した点を問題視はしています。

 そのうえで,第1審では,別居の際の妻側の状況や別居の際の事情から見て夫側が子供の面倒を見ることを了解したとは言えないこと等から,問題(違法性)は大きいとは言えなおと述べています。そして,子供の現在の監護状態には特に問題がないから,緊急に引渡す必要はないとして夫側の請求を退けています。

 

 これに対し,第2審では,妻側が保育園から連れ出したという態様のみを考慮して違法性は大きいと判断しています。そのうえで,緊急に引渡す必要があるのかどうかという点は,違法な行動によって回復する必要のある状況が出た場合には,子供の監護をするのはどちらの親が適正かという問題に立ち入るのではなく,仮に引き渡すことで子供の安全な生活などに大きな支障が出る等の特別な事情のない限り,仮の引き渡しは認めるべきと判断しています。

 この考え方では,離婚後の監護者として夫婦のどちらが適切か等の問題は,のちの監護者の指定の手続きで行われることになります。

 

 このケースでは,先ほど触れた別居後に父親側が監護していたこと・保育園からこっそりと連れ出したこと・連れ出した後居場所を明らかにしない等の事情があり,家をいきなり出るケースとどこまで同等に考えられるかという点はあります。ただ,連れ出す前の原状に戻して子供にとってどちらの緒他の監護が適切かを考えていくと述べる点もあって,注目すべきものと考えられます。

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