法律のいろは

なかなか帰省しない実家にある「お墓」を今住んでいる地区に移す際に注意点はあるのでしょうか?

2018年2月20日 更新 

 実家から遠く離れた場所に今住んでいて今後帰る予定がないという話は東京などの大都市に限らず,地方の中核都市でも時々聞く話です。地元に残った兄弟姉妹が親等先祖の「お墓」の対応をしてくれるという場合もあるでしょうし,兄弟姉妹も地元にはいないし,そもそも兄弟姉妹がいないということでご自身で対応をしていく必要があるということもあるでしょう。

 地元まで帰省することが負担となり,今住んでいる場所に「お墓」を移す際に注意することはあるのでしょうか?

 

 まず,手続きの関係でいえば法律上勝手に「お墓」を移すことはできません。法律上「お墓」を移すことは「改葬」と呼ばれていて,埋葬をした市町村の市町村長の許可を得る必要があります。そのため,こうした許可を得るための申請を先ほどのケースですとご実家のある市町村に対して行う必要が出てきます。その際には,法令で要求される書類を取り付けるとともに,改葬をする理由や改葬をする場所などを書いた書類を準備する必要があります。

 許可を得ないと罰職があるので注意が必要です。許可を得たうえで,改葬をすることになる墓苑に許可証を提出して手続きを進めていくことになります。

 

 次に,今改葬をする墓苑の話をしましたが,改葬をするということは,これまで利用してきた墓苑との関係では利用を終了させて使用している箇所を返還する必要が出てきます。その際にどのように進めていくのかは,通常はその墓苑の管理規則等で定められているでしょうから,それに則って行っていくことになります。改葬先の墓苑との関係では永代利用権の設定契約の手続きをしておく必要があります。定められた利用料などを支払う必要があり,こうした準備も進めていく必要があります。

 ちなみに,こうした改葬の手続きをご自身だけで行うには「墓地使用権者等」である必要があります。「墓地使用権者等」とは,相続において「祭祀承継者」(お墓などの管理をすることになった方と簡単には言うことができます)になった方が当たることが多い,墓苑の名義人(権利者)として墓苑の権利者の帳簿に載せられていることのことを言います。これに該当しない方が改葬の手続きを進めるには,「墓地使用権者等」の承諾が必要となってきます。祭祀承継者とは,相続人の間の話し合いでも決められますし,遺言で決めることも可能です。遺言での指定もなく,話し合いで決まらない場合には家庭裁判所に申し立てをして審判で決めてもらうこともできます。よく「長男や長女だから当然」という話も聞きますが,あくまでもそういったケースがあるだけで当然にそうなるわけではない点には注意が必要です。

 

 このように,注意するべき手続き的な点があります。なお,今回は触れていませんが,墓苑側が勝手に改装をできるのかどうかという点が問題になることもありえます。いずれ触れる予定です。

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