法律のいろは

不動産登記をすることに相手方が応じてくれない場合(その②)

2019年5月1日 更新 

 数年前に,その①として,売買や相続などで土地や家の権利を取得したものの名義変更をしない場合の話を触れました。だいぶ前なので少し復習しますと,相続の場合はまずは相続したという名義変更をした後(これは相続人であればだれでも一人でできます),遺産分割協議等を行い,それに基づいて共同で名義変更の申請をする必要があります。売買や離婚の際の財産分与の場合でも渡す人と取得する方が一緒に申請をする必要があります。

 ちなみに,前回のコラムで触れました長い間管理をしていた土地を自分の名義に変更する際も名義を渡す形になる方(あるいはその相続人の方)と一緒に名義変更をする必要が出てきます。

 

 こうした場合に多くは相手方も名義変更に協力してくれるでしょうから,その場合にはご自身あるいは司法書士の方に依頼して申請を行うことになるでしょう。ところが,感情的な理由や協力に金銭面を含めた条件面を出され折り合いがつかない場合には,協力が難しいこともありえます。そうした場合には,弁護士を入れた交渉や裁判を起こして名義の変更を求めることになります。その中で金銭面(いわゆる「ハンコ代」)の条件面が折り合うこともありえますが,感情面の対立が大きな場合には裁判での解決(ただし,裁判内でも話し合い解決を進められる場合は多くありえます)を目指すことになります。

 仮に裁判での解決を目指すのであれば,名義の変更をその方にする理由を言い分及び証拠で準備していく必要があります。例えば,売買による権利が移ったというのであれば,前の名義人(所有者)から売買で譲り受けた(前の名義人が売り主でない場合には,売買契約だけでは当然に名義を移すことは求められない可能性がありえます)ことを明らかにする必要があります。ご自身が事実上管理していた土地の名義移転を求めるであれば,いつから管理をしていたのか等を明らかにする必要が出てきます。

 これに対して,遺産分割の場合は話し合いが難しい場合には家庭裁判所に調停あるいは審判を申し立てて(通常は調停になろうかと思われます)その中で名義をご自身にしたいという場合であれば,その根拠や他の方の相続分に応じたお金などの支払いについて等を準備しておく必要があるでしょう。ちなみに,相続の場合に,「〇〇に相続させる」といった遺言がある場合には,こうした話し合いなどがなくてもご自身だけで名義の移転手続きを進めることができます。ただし,遺言を残す方がそのように書く必要性があります。言い換えると,遺言をされる方の体調などの事情によっては,そうした希望をはたらきかけることが後で遺言の有効性等をポイントとした大きな紛争につながりかねないことに注意が必要であると思われます。

 新しく導入された配偶者居住権については,家や土地の所有者が応じない場合には仮登記の設定を仮処分を行って行う(このようなケースでは売却などの可能性があるため)必要が出てくる場合があります。

 

 こうした裁判(あるいは調停などの手続き)では,名義の変更を求める側の言い分をきちんと示し,その根拠となる証拠を示す(相手方が反論などをしてきた場合には,それが成り立たないことを示す)必要があります。とはいえ,調停の手続きではあくまでも話し合いですから,法律上の前提事項に加えて,相手を納得させる条件面を提示するなどの準備が必要となってきます。

 このようにして,裁判などで結論が出る・話し合い解決をした場合に,その内容(判決や和解・調停の書類)に基づいて権利を得る方だけで名義変更の申請をすることができます。

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