法律のいろは

相続における配偶者居住制度とは?

2019年8月4日 更新 

 今年(令和1年・2019年)の7月から一部相続に関する法律の改正が施行されていますが,来年の4月からは別の改正部分も施行されます。それが,配偶者の居住権を保護する制度が導入されるというものです。今回は,この制度の概要などについて触れていきます。

 

〇改正により制度が導入された理由

 詳しくは改正の際の審議会の資料などに書かれていますが,簡単に言えば高齢で配偶者が亡くなった場合に,残された側は引き続き同じ家で生活する必要性が高く・移動もままならないために,生活などの保護のため,同じ家での生活ができるようにする必要があるというものです。こうした理由に基づき,とりあえずの生活の場としての保護である短期保護の制度と長期的な生活の場としての保護を図る長期保護の制度が設けられます。

 遺言がない場合に,最終的には遺産分割でだれが残された家の所有権を取得するかという話がありますが,そうした遺産分割等がなされるまでの居住権を確保する短期保護の制度・家の所有権とは別に無料で居住をする権利自体を遺産分割・遺言での贈与などの対象として居住する権利を確保する長期保護の制度に分かれます。

 

〇制度の概要は?

 先ほども触れましたが,短期居住権の制度と長期居住権の制度があります。

 まず短期居住権の制度ですが,先ほども触れましたが,遺産分割での話し合いでだれが家の所有権を取得するか・相続開始から6か月が経過するまでの遅い方まで,亡くなった方と残された配偶者がそれまで暮らしてきた家に無料で済めるようにするという制度です。この制度は内縁の方は使うことができず,あくまでも亡くなった方と無料で同居をしてきた家の部分のみに認められるものです。そのため,同居してきたわけでない部分については認められません。例えば,二世帯住宅の子供たちが生活する部分や1階店舗で2階居住部分の場合には,いずれも自分たちが生活してきた部分だけで認められる権利になります。

 あくまでも自分が暮らすうえで認められるのみで他の方に貸すことはできません。ちなみに,配偶者であっても一定の場合(法律で定められています)の場合には,この権利は認められません。

 

 次に長期居住権の制度ですが,これは家の所有権とは別に居住する権利を遺産分割や遺言での贈与などの対象にできるとするものです。この権利があると家全体を無料で使うことができます。ここでは,他人にその家の居住をする権利を設定する等の収益を図ることができます。ただ,収益を図ることができるといっても,居住やそれまでの利用状況を勝手に変えることはできませんし,所有者となった方に無断で他の人に貸すこともできません。違反をすると,短期居住権の制度の場合と同様居住権がなくなることがあります。

 こうした居住権の設定は,遺産分割で家を取得した方が残された配偶者に無料か有料かは別として貸す・そもそも配偶者に家の所有権を渡すことでもできます。長期居住権の制度は利用期間の設定が可能で,遺産分割協議や遺言によって決める・定めることとなります。長期居住権ついては登記をすることができ,登記をしないと家の土地建物の権利を取得した方が売却をした場合に買主に居住権を主張できません。通常子供が取得を当初するでしょうから,登記をするかどうかはその関係性などを考えてのことになるでしょう。こちらの制度については長期の利用権として一定の財産価値があると考えられ,相続税の課税面でも評価式が通達で出されています。また,居宅に関する相続税を考える上での大きな評価減を行うことができる小規模宅地の特例の適用対象となっています。配偶者居住権の価値の分・土地の利用権は制限されますので,土地の評価額は下がります。評価式は通達で定まっていますが,居住権の残存年数が長いほど(配偶者の生存中とすると,配偶者の平均余命までとされます)価値は高くなります。

 居住権を利用するかどうかは,住む家の確保の問題(親子間の対立が大きく問題が起きそうなのかなど)や二次相続を含めた相続税課税をどうするのかなどを考えて決めることになるでしょう。ちなみに,配偶者の方が亡くなった後の二次創造ではこの居住権は単に消滅するだけで相続税その他の税金がかかるということはありませんが,権利の存続期間の途中でやめることを取り決めた場合(違反があったから消滅を請求する場合は該当しません)には配偶者居住権の権利分を贈与した扱いになりますから,税率の高い贈与税の負担が生じかねません。途中で対価を支払って居住権を消滅させる場合には,配偶者が受け取るお金は譲渡所得として所得税の課税対象になりますが,対価額から差し引く「取得費」については利用期間(存続期間)に応じた原価を行ったうえで計算を行う旨が決まっています。

 

 細かなところは他にもありますが,このように制度が設けられる予定です。

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