法律のいろは

認知症になっても遺言をすることはできるのでしょうか?

2019年10月5日 更新 

 年齢を重ねるごとに判断力が落ちていくということから今後どうしようかという方がおられるかもしれません。また,最近物忘れがひどくなっているけれども,遺言ができるのかどうか,ご親族で遺言をしてもらうことに問題がないかどうかという点が気になる方もおられるかもしれません。実際には,15歳以上であれば遺言を残すことは最悪自筆で書くのであれば可能ですが,後で無効(要は遺言がない状況と同じであると判断される)と判断されることが問題となります。

 遺言をしても無効になるリスクの話は以前触れましたが,その中に判断能力が失われてしまった場合を取り上げています。こうした状況が認知症と重なるかどうかは問題となることはあります。認知症自体いくつかのタイプがあり,状況や症状の進行の有無は異なるところですが,今回はアルツハイマー型のみで他に脳梗塞などがない場合を取り上げていきます。

 

 まず,ここでいう判断能力がなくなるとは抽象的な話で,簡単に言えば,遺言をしてその内容を理解できるだけの判断力がなくなった状況です。ただし,遺言もその内容によって単純なものから複雑なもの,大きな金額が絡むものからそうでないものまで様々なバリエーションが考えられます。また,認知症かどうかは簡易な検査(代表例としてHDS-Rとも呼ばれる長谷川式検査やMMSEと呼ばれるミニメンタルステート検査と呼ばれるものがあります)やその他を組み合わせて判断をされることになりますが,こうした検査を受けていなくても認知症に該当する症状が出ていることはあります。要するに,診断を受けたかどうかが決定的というわけではなく,症状やその裏付けから見てどのように言えるかが重要になってきます。

 こうした検査の内容や症状がどうであるのかが問題になってきますし,遺言でかかわる財産金額が大きいかどうか・内容が複雑かどうか・遺言を残す経緯や動機等様々な事情を考慮していくことになります。ここで考えておくのは,後で遺言が有効かどうかがトラブルになるかどうかとなった場合の見通しです。トラブルになる場合には,遺言無効の訴えという裁判になることもありえます。

 

 こうした状況になることを避けたいのであれば,専門の方の支援を受けつつ公正証書遺言を残しておく(こうした場合には,公証人やその他専門家の方が資料を踏まえつつ判断能力の見立てを立てるのが普通ですから,よほどの場合を除けばリスクを抑えることは可能です)のは一つの方法です。ただし,介護施設の契約その他を行うにも判断能力が衰えていて契約を行うことが難しい場合があります。ちなみに,した場合でも子供など親族が契約をすれば問題ないという考えもありますが,実際には法律上有効に契約ができないという点から契約ができないこともあります。こうした場合に成年後見の申し立てを行い,親族(状況によっては専門職になることもありえます)が後見人等になるということもありえます。こうした場合には,原則として遺言を残すことが難しくなります。法律上は,判断能力がその後回復し,医師二人が立ち会って判断能力が回復したことを付記してもらえるのであれば,遺言をすることは可能です。

 また,成年後見開始の審判がなされている場合でも,医師二人以上が立ち合い,判断能力がある程度回復しているとの記載がある状況の記載があれば遺言自体はできます。ただし,成年後見開始の審判がなされている場合には,既に常態的に判断能力面の問題があると考えられている場面ですので,実際上は難しいのではないかと思われます。

 

 ただし,一般に進行性があるとされるアルツハイマー型の場合にこうした事はそうは簡単にはないだろうと考えられる点には注意が必要でしょう。

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