法律のいろは

交通事故にあった事で仕事ができなくなった分の損害賠償はどうなるのでしょうか?(その⑮)

2013年7月1日 更新 

 これまで何度か,後遺症逸失利益を考えるうえで,基礎となる収入という問題について,触れました。

 

 基礎となる収入をどう考えるかは,基本的には後遺症逸失利益と休業損害では似たように捉えていきます。たとえば,会社役員については,利益配当的な要素のある部分の報酬であれば,休業損害の基礎となる収入にはならないという話を以前しました(詳しくは,このシリーズの⑤で触れています)。同じように,逸失利益でも,働いたことの対価ではない利益配当部分は基礎となる収入とは考えません。

 

 今回は,高齢者について触れていきます。

 まず,高齢者については,後の回で触れますが,逸失利益の発生する終わりの時期,つまりいつまで働く扱いとするかという問題があります。以前少し触れたように,67歳まで働くという扱いを基本的にしますので,たとえば,70才だったら全く働かないないのかという問題が出てきます。

 この問題については,67歳以降に症状固定した場合には,67歳以降もある程度働くという扱いがなされます。その場合の収入ですが,働いて現実に収入がればともかく定年後の場合にどうするのかという問題が出てくるところです。

 こうした問題に関しては,現に働いていなくても,働く可能性が十分にあれば,賃金センサスの産業合計・企業規模別合計・学歴合計・男女別・年齢別の平均賃金額を基礎とすることになります。

 

 ここで,高齢者とは何歳以上かという問題がありますけど,先ほど述べた扱いは65歳以上についてです。年齢別平均賃金も65歳以上等高齢者の年齢に応じた賃金を考えていくことになります。なお,年少者と異なり,高齢者は男女別に賃金を考えていくことになります。

 

 他の問題点としては,働く可能性ですが,単に能力的に働けるだけでなく,ある程度証拠にもとづいたものである必要があります。この点がハードルとして残ります。

 

 ちなみに,高齢者の逸失利益に関する基礎となる収入については,交通事故で亡くなった場合に年金が含まれるかという問題があります。これはいずれ触れます。当然のことながら,後遺症が残るケースでは,高齢者の方は生存していますので,年金はもらえます。ですから,逸失利益に年金がなるということは考えられません。

 

 次回に続きます。

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