法律のいろは

NHKの受信契約がいつ成立するのか・受信料の消滅時効がいつからスタートするのかを判断した最高裁の判断(その②)

2017年12月8日 更新 

 前回はタイトルの話について問題が出てくる背景的な話を触れました。今回はその続きです。

 簡単に復習しますと

 ①法律上,「受信設備」(このケースでは衛星報償を受信できるテレビを設置していた方)を設置した方はNHKとの契約  

  締結を義務付ける決まりがあるけれども,憲法上許容されるか

 ②先ほども法律の決まりが許容されるとして,契約の成立はいつの時点で・どういう形でなされるか

 ③受信料の支払い義務は受信設備設置時なのか,契約が成立した時点等別の時点かどうか

 ④受信料について時効期間はどこからスタートするのか

 等が問題となる点です。

 

 今回は特に②以降の問題について触れていきます。まず,②についてです。契約内容を示して申し込みを行い・受け入れる(承諾といいます)ことで成立しますが,NHK側から受信契約を結びたいと申し込みがあっても応答がなければ,先ほどの話からは成立しないことになりそうです。法律の決まりでは,契約締結をする義務がある(応じる義務があるとも言えます)というだけで応じない限りは単にその違反があるだけともと捉えられるからです。実際,申し込みがあった時点かどうかが争いになりました。

 法律上,契約に応じる等意思を示す事柄については,相手が応じない場合は裁判手続きによって応じたことにすることができます。もちろん,そのためには相手方に応じるだけの理由(義務)がある場合である必要があります。また,どのような契約であるのかがはっきりと特定されている必要があります。特に,放送法の決まりでは契約を締結しないといけないとされているだけで内容は特になく(NHKの受信契約規約で内容は定まっています),こうした特定がなされているのかどうか・契約の一方側で内容を決める,変更できる形でいいのかが問題になってきます。

 

 最高裁の判断では,一方側であるNHKが法律では決まっていない契約内容を決める点が妥当かどうかを検討しています。結論として,契約締結の方法や受信契約の単位(世帯単位)等が明確に定まっている・各受診設置者間で不公平がない・契約強制を求める理由(民間放送と併存して公共放送を担うからも財政基盤を受信料から安定させる)からも適当であるから,問題ないと判断しています。

 ちなみに,最高裁の判断には反対意見(簡単に言うと結論への反対を述べる裁判官の意見)があり,契約内容の特定ができないという理由から,契約締結の強制はできないのではないか(他に別に2つの点を述べています)と述べています。

 

 今の話は契約締結を強制できるかという話ですが,仮に強制できるとして先ほど述べたように,強制を命じる判決が確定して初めて強制の効果が出るのに,規約通りそれ以前の受信設備設置時に遡れるかは問題となります。最高裁の判断では,簡単に言えば,同じ時期に設置をしても,受信設備設置後にいち早く契約を締結した方と契約締結に抵抗して裁判の判決まで至った方との間に,受信料の支払い時期が異なるのは不公平であると述べています。これは,契約締結に抵抗した方がその分受信料の支払いを免れるのはおかしいという考えに基づくものといえるでしょう。

 反対意見ではこの点への反対も述べられていて,契約締結に抵抗した場合裁判の判決確定の時点まで契約は成立しないために,判決確定の時点までは契約に基づく請求権は発生しえないのだから,受信料規約の内容に基づく負担は生じえないと述べています。この話からは,こうした規約通りの内容を命じるのは無理であるという結論になります。

 なお,補足意見と呼ばれるものの中には,法律で契約内容を定めておいた方がいいという意見が述べられています。

 

 いずれにしても,このように意見の異なる部分はあるものの,契約締結を強制する根拠や公平な負担などの理由から,受診規約通りの契約内容を命じられる(規約によって受信料の支払い義務は受信設備設置時点になる)との判断となっています。ここは③の話になります。

 

 ④以降の話は次回触れます。

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