法律のいろは

別居時に現金を持ち出すことは違法なのでしょうか?

2014年10月13日 更新 

 以前、離婚の際に、それまでに使い込まれた預金などをどう考慮・清算することになるかについてお話ししました。これと同じくらいしばしば問題になるのが、今回取り上げます、別居時の現金の持ち出しです。通常よくあるのは、例えば妻がDVなどを理由に家を出る際、引越し費用や当面の生活費にあてるため、まとまった現金や現金が入っている預金通帳を持ち出し、使うケースです。

 こういった場合、他方(通常は夫)が持ち出しをした相手に対し、不法行為に基く損害賠償請求をすることが考えられますが、認められるでしょうか。

 これに関する裁判例があります。事案は妻が別居する際に、自宅の金庫からまとまった額を別居後に借りる部屋の家賃や生活費などにあてるため持ち出し、ほとんど使ってしまったというケースです。

 この事案では、そもそも金庫にいくら入っていたのか自体も争いになっていたようですが、裁判所は持ち出した妻が認める金額が金庫に入っていたとみて、それまでの夫婦の収入や生活状況からみて、持ち出した現金は婚姻費用(生活費)の夫負担部分の持ち出しとして、直ちに違法とはいえないと判断し、妻の損害賠償責任は否定しています。

 以前触れました、預金の使いこみについて、日常の家事の範囲といえる額から多少超えているといっても、なかなか損害賠償責任が認められにくいとお話ししました。上の事案も夫婦の収入からすれば日常家事の範囲の支出(数か月分ということにはなりますが)とみることができるのが前提になっていると思われます。

 ただ、このケースではおそらく夫からの婚姻費用の支払がなく、妻の収入もなくなったと考えられる(夫の会社の経理を担当、裁判例でもおそらく途絶えたとみています)ことから、上記のような判断に至ったといえます。ですので、婚姻費用の支払を受けていて、なおかつ持ち出した現金がこれまでの生活状況と比較して余りにも多額であれば、違法性ありとされるケースもありうるのではないかと思います。

 

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