法律のいろは

離婚と慰謝料(その⑤)

2013年11月26日 更新 

 離婚の際に,慰謝料は請求すれば認められるというものではないという話は以前しました。同じように,女性側から男性側に請求すれば必ず認められるものでもないという話をしました。そのうえで,離婚を余儀なくされる原因を作った側(暴力や不倫等)が慰謝料の支払い義務を負う・双方同程度の原因がある場合には慰謝料の請求は認められない可能性が高いという話にも触れました。

 今回はこうした話の補足です。

 

 離婚の話し合いが,家庭裁判所の調停でも決着がつかない場合には,離婚裁判で決着をつけることになります。当然,離婚したいと思う側が裁判を起こすのですが,離婚すること自体には争いがないけれども,未成年の子供の親権で折り合いがつかない場合や離婚の際のお金の問題(財産分与や慰謝料など)で折り合いがつかない場合も含まれます。

 こうした場合には,離婚裁判を起こされた側も反訴という形で,離婚裁判を起こした側に対して,離婚裁判を起こすケースがよくあります。離婚裁判を起こされた側が離婚裁判を相手に対して起こすのは,パッと聞いただけでは意味が分かりにくいですし,意味がないのではないかという印象が残るかもしれません。ちなみに,反訴とは,大ざっぱに言えば,裁判を訴えられた側が訴えられた裁判の中で相手に対して一定の条件のもとで訴えかえすことです。

 これは,離婚(民事)裁判が基本的には,裁判を起こした側が請求する内容について法律上の理由があるかどうか判断するものであるために出てくるものです。たとえば,ある程度単純化した例として,離婚したい・慰謝料を100万円払って欲しい・未成年の子供の親権は自分に欲しいとして離婚裁判が起こされたケースがあるとします。この場合法律上の離婚原因があるかどうか(訴えた側のいう離婚原因があるかどうか)・親権はどちらの親が適切か・慰謝料の支払義務を100万円の範囲で訴えられた側が訴えた側に対して負うのかどうか,が裁判で判断されることです。

 訴えられた側が,離婚はしてもいい・親権は自分こそふさわしいと思う場合には,既に訴えられた事項で判断されますから,裁判の中で親権を争うにしても,わざわざ離婚裁判を起こす必要はありません。ただ,訴えた側こそ自分に100万円の支払義務があるから支払うべきだと考えた場合には,今ある裁判で問題を解決しようとすれば,自分でも離婚裁判を起こして慰謝料をも請求する必要が出てきます。

 

 そのため,双方とも同程度の責任しかないような場合には,あまり反訴という形をとることには意味がない可能性が高いです。相手の非を暴きたいという気持ちはでてくるのはやむをえませんが,裁判の場で暴きあうには,かなりのエネルギーを使うことになりかねない印象があります。

 

 次回に続きます。

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