法律のいろは

離婚と住宅ローン(その④)

2014年1月5日 更新 

 離婚の際の住宅ローンの取り扱いについて,これまで3回触れてきました。前回は,オーバーローンの場合に住宅を売却してローンの負担を考えるというものでした。前回も触れましたように,他の財産があって清算できる場合には話が簡単になる面があります。

 

 前回の例を少し変えます。婦で築いた財産はマンションのほかに貯金が1500万円あります。築20年のマンションで1000万円しか価値がありません。しかし,住宅ローン額は2000万円残っています。家の名義は夫で住宅ローンを借り入れたのも夫です。妻が保証人となっています。

 この場合,売却しても,1000万円のオーバーローンになりますが(2000万円-1000万円),貯金が1500万円ありますので,差し引き(-1000万円+1500万円)で500万円がプラスになります。以前も触れましたように,財産分与における清算はプラスの財産を清算することです。ですから,単純にオーバーローンになった場合は,財産分与はないにもかかわらずマイナス部分をどうするか考えないといけなかったのに比べて,単に500万円を財産分与という形でどう清算するのか考えればいいだけになります。

 

 ここで前回までの例に戻して,財産がマンションしかない場合を考えます。この場合にマンションを売却せず,今後も妻が住むけれども,夫が住宅ローンを払い,完済後に妻にマンションの名義を移転するという合意をした場合を想定しています。このような合意もすることはできます。もちろん,住宅ローンの支払いをする夫の側にはこうした話に応じる義務はありませんが,たとえば退職金のような今手元にない財産が清算の対象になった場合に,今あるお金で支払をするケースではこうした合意をする可能性も考えられなくはありません。

 この場合,夫には財産分与に基づく義務が残る形になります。したがって,離婚した後に,住宅ローンを完済するまでは夫の側にマンションの所有権はあります。完済後には合意にもとづき所有権を移す義務が残ることになります。この場合は,金融機関には影響しませんから,その承諾は不要です。ただし,この例では妻は住宅ローンの保証人ですから,夫(厳密には元夫)が支払えなくなった場合には自分に請求額るリスクはあります。保証人でなければこうしたリスクはありません。

 

 こういった形で決着をつけるかどうかも,これまで触れた色々な合意と同様,今置かれた事情と将来のリスクを考えて決める必要があります。次回に続きます。

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