法律のいろは

過去に払いすぎた婚姻費用(生活費)は清算できるの?

2014年1月12日 更新 

 夫婦の一方が、他方に対して生活費・子どもの教育費などとして負担していた金額が過大である場合、離婚の際に清算できるのでしょうか、またその場合にはどのような形で考慮されるのでしょうか。

 夫婦が離婚に至った場合、夫婦で築き上げた預金や不動産といった資産については、財産分与として清算することになります。婚姻費用(生活費)とは以前お話ししたとおり、夫婦と未成年の子どもが資産や収入などに応じた通常の社会生活を維持するうえで必要な費用のことをいいます。

 ですから、普段生活に充てていくお金である、婚姻費用(生活費)と、夫婦で形成した資産とは別のものであることから、過去に過大に婚姻費用(生活費)を負担したとしても、それは財産分与とは別物と考え、別途話合いや調停・審判の中でどうするか決めるべきという考えもありえます。

 しかし、財産分与は単に夫婦で形成した、現にある資産の清算にとどまらず、これまでの夫婦関係で生じた財産にまつわることすべてを一括して処理する機能もあることから、結婚生活中に一方が過大に負担した婚姻費用(生活費)についても、一切の事情とみて、財産分与の中で見ていくべきという考え方が判例・多数の裁判例です。

 ただ、多くの事例は夫婦が別居後に過大に婚姻費用(生活費)を負担したケースに関するもので、夫婦がまだ円満であるうちに一方が過大に婚姻費用(生活費)を負担したときについては、また違った考慮が必要です。

 というのも、未だ婚姻関係が壊れていないうちには、夫婦がお互い助け合って生活していくのが前提になっているので、たとえ一方が過大な負担をしていたとしても、それをわざわざ他方に対して、払いすぎたから返してほしいなどと求償することが考えにくいからです。ですから、仮に多く婚姻費用(生活費)を負担していることがあったとしても、それはそういう分担であるという合意が暗黙のうちにできている、とみるのが自然でしょう。

 ですから、日々の生活において、そのような分担であるという合意により行われ、それが問題なく続いている以上、その後夫婦関係が壊れたとしても、そのときにこれまでの過大に負担した婚姻費用(生活費)があったとして、蒸し返して請求できるとみるべきではないことになります。

 ただ、離婚の清算をする際に、過大に負担をしていた婚姻費用(生活費)について、財産の形で残っていた場合にはどう考えるかはまた別れることになります。

 先に述べたように、婚姻関係が円満なうちの婚姻費用(生活費)の負担については、日々の夫婦による分担に関する合意が暗黙のうちになわれていたとみると、財産の形で残っているものについては、その形成された過程を考慮して、財産分与での夫婦の財産を清算するということで処理していくという考え方ができます。

 

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