法律のいろは

婚姻費用支払義務はどのような場合に解消するのですか?

2014年2月4日 更新 

 前回に続き、婚姻費用(生活費)についてのお話です。

 以前、婚姻費用(生活費)に関して何回かコラムを連載した際にも触れましたが、婚姻費用に支払の終期(いつまで払えばいいのか?)については、婚姻費用が結婚生活を営むにあたって必要な費用と考えられることから、離婚により結婚生活が解消されるか、別居が解消され、夫婦が再び一緒に生活をするようになったときとされています。

 離婚により結婚生活が解消されれば、婚姻費用(生活費)の支払い義務がなくなるのは当然として、では、別居が解消され、夫婦が同居するようになれば婚姻費用(生活費)は支払わなくてもよくなるのでしょうか?

 これに関する判断をした裁判例があります。これは、婚姻費用(生活費)を支払わないため、妻から給与の差し押さえを受けた夫が、夫婦が同居をしているため、婚姻費用(生活費)の支払いに関する審判で定められた、「当事者の別居状態の解消」に至ったとして、差し押さえの排除を求めたというケースに関するものです。

 この裁判例では、確かに夫が自宅に戻ってきて以降、自宅で寝起きをしているので、「当事者の別居状態の解消」には至っているといえるものの、夫が自宅に戻るようになった経緯やその後の生活状況(主に夫婦が協力して助け合って生活をするようになったといえるか)に注目した判断をしています。

 そして、夫は婚姻費用(生活費)が支払えなくなったからといって自宅に戻ってきたこと、家事の一部をしているものの、わざわざ片付け前・片付け後の写真をとるなど、将来裁判になったときを想定して証拠作りのために行っていると思えること、途中病気による欠勤をしていたが、その後復職したことを妻に話していないなどの事情を詳細に認定しています。

 そして、自宅に戻ったのが結局のところ婚姻費用(生活費)の支払いを免れるために意図的に行われたといえること・本来であれば、病気による収入減少は再度の婚姻費用(生活費)の減額調停・審判によるべきなのに、それによっていないことからみて、意図的に支払を免れるために同居状態に至ったことをもって、支払義務を免れるとするのは道義的にみてもおかしい、と判断しています。

 なお、このケースは、夫が同居するようになった以降も、部屋の入口につっかえ棒をしたりして、妻や子供たちとは交流することがなく、また子どもの学費の支払いも拒否していたなどというものであり、そういった事情をみても、一旦別居に至った夫婦が結婚生活を続けるのが前提で、再び同居するようになったというのとは明らかに異なります。

 こういった場合には、いくら同居をするようになったとはいえ、結局のところ夫婦が協力し合って生活をともにしているとはいえないことから、婚姻費用(生活費)の支払い義務を免れないと判断したといえます。

 ですので、婚姻費用(生活費)の支払いを免れるのは、同居により夫婦生活を修復できる見込みはあるケースといえるでしょう。

 

 

 

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