法律のいろは

遺産分割協議が無効や取消ができる場合はあるのでしょうか(その①)?

2016年6月29日 更新 

 遺言が存在しない場合に,ある方がなくなって財産があれば相続が発生するだけでなくいずれ分ける必要が出てきます。この際に,最終的にどのように財産を分けるのかを決めるのが遺産分割協議になります。家などの不動産を親族のうち誰かの名義にするには必要になってきます。このような遺産分割協議が無効になるような場合はあるのでしょうか?

 

 まず,遺産分割協議は相続人全員で行う必要がありますから,相続人の中でだれかかける場合には無効になります。協議の後で,亡くなった方の子供であると法律上確定した方(認知の裁判で勝訴した場合など)には,お金の清算をすることが法律で定められています。ここでのお金の金額はその方の請求した時点での金額になります。これに対して,相続人でない方が合意に加わって成立した遺産分割協議も無効となる場合があります。ただし,婚姻無効確認や嫡出否認・親子関係不存在確認・養子縁組無効確認等,相続人のもととなる法律上の親子関係を解消する(無効であることを法律上確定させる)裁判の手続きをしている最中に遺産分割協議が成立した場合であっても,やり直しは必要となります。やり直しが必要な部分(無効な部分)は,原則としては相続人ではない(と後で判断された)方に対する分割のみとさrますが,例外的に全体として公平を害する場合にはすべてやり直し(無効となる)という考え方が一般にとられています(一部,全て無効でやり直しが必要とする見解もあります)。どこまでが例外かはケースごとに確認する必要があります。

 特に専門家の方に相談をした場合に,相続人の誰かが抜けているというのは,長年遺産分割協議をしておらず,相続人の範囲が広がりすぎたため,調査が追いつかない場合以外にはそこまではないように思われます。もっとも,誰かの署名などを勝手に行った(偽造)場合や亡くなった方の配偶者について離婚届を勝手にしていた(この場合は離婚届の偽造)場合などには,本来の場面と比べてみると,相続人が欠けたのと同様の状況が生じかねません。また,法律上の親子関係が争われている場合には,その係争関係やいつ頃解決しそうなのかという点を確認の上,解決後に遺産分割を行うのかを検討する必要もあります。家庭裁判所の判断を経ない預金の払い戻しについては,法令の定められた範囲内では各相続人が払い戻しをできる(その範囲で遺産分割で取得した扱いになります)点は,解決後での話はあくまでも調整を事後で行うということになろうかと思われます。

 

 ほかにも,遺産分割協議の際の取り決めをする際に,詐欺行為があった場合などには取り消しをできることがあります。たとえば,実際とは違うのに,取得する部分が少ないが開発によってそこの地価が上がるから平等だと信じさせたような場合(これは架空の事例)です。他のコラムでも取り上げている前提事情が実は大きく異なていたというケースや特に自筆証書遺言で遺産分割の内容とは大きく異なる遺言書が後で見つかった場合です。取り消しが認められるかは遺言書の内容次第です。自分に有利な内容の遺言があれば,それとあえて異なる内容の遺産分割協議をすることは通常考えにくいこともあり,遺産分割協議をするか・協議での判断に影響を与える内容の遺言の内容であれば,取消ができることになります。

 

 こうした場合には,遺産分割協議に基づいて不動産の名義が帰られたことが後で争われる場合もあるでしょうし,その他遺産分割協議の向こうが主張されることもあり得ます。本人同士で簡単に話し合いがつけば問題は特にありませんが,解決しない場合にはその有効性が争われる裁判などを行う場合も出てきます。

 このような場面では,最初のケースでは偽造などが存在したのかどうかが大きな問題になってきますし,後のケースでは,実際に詐欺行為があったのかどうかが重要になってきます。

 ちなみに,遺産分割協議の有効性が争われる,遺産分割協議無効確認などの裁判では,相続人全員が裁判に参加する必要があります。これは,向こうが確認された場合には再度遺産分割協議をする必要があるためです。

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