法律のいろは

婚姻費用とは何でしょうか?(その⑳)

2014年5月20日 更新 

 婚姻費用を算定するにあたって、支払義務を負う者が受け取る収入のうちどこまで考慮することができるのでしょうか?

 これまでもお話ししたとおり、婚姻費用は夫婦が結婚し共同生活をするにあたって必要な費用をいいますが、これは夫婦の資産、収入、その他一切の事情を考慮して程度・内容を決めるとされています。

 通常は収入といえば働いて得たお金ということになり、生活保護などの公的な扶助は原則として考慮はしませんが、場合によっては考慮されることがあるというのは、先日お話ししたとおりです。

 それでは、やや特殊なケースですが、第三者から損害賠償金としてまとまった金額を受け取る予定があるときは、収入として考慮されるのでしょうか?

 これについて判断した裁判例があります。これは、自営業を営んでいた義務者が東日本大震災により被災し、収入が激減した一方、営業損害について原子力損害賠償ができる地位にあることから、支払を求める者が義務者の収入の中に損害賠償金をも含めて考慮すべき、と主張していたというケースです。

 この裁判例では、損害賠償請求できる地位にあっても、その具体的な額・支払時期がはっきりしていないこと、義務者が婚姻費用の支払を継続していることから、賠償金の受取が予想される金額を基礎収入として婚姻費用の算定をすることを否定しました。

 しかし、この裁判例では、支払義務者が収入の見込みがなく、婚姻費用を一切負担しないと主張するような事情があれば、損害賠償金をも収入の中に含めて考慮される余地を認めています。

 上記裁判例は、震災後収入が激減しているとはいえ、それでも一般家庭を上回る収入を得ていて、相当の婚姻費用の支払がなされ続けているというケースですから、上のような判断がされたのだと思いますが、収入のあてがもはや損害賠償金しかない場合には、それとは別に公的扶助が受けられるあてもないでしょうから、基礎収入に算定される可能性はかなり高いでしょう。

 

メールフォームもしくはお電話で、お問い合わせ・相談日時の予約をお願いします

早くから弁護士のサポートを得ることで、解決できることがたくさんあります。後悔しないためにも、1人で悩まず、お気軽にご相談下さい。誠実に対応させていただきます。