法律のいろは

相手方の収入がほとんどない場合と離婚後の生活費

2014年6月21日 更新 

 いわゆる熟年離婚で度々見られますが、妻が専業主婦で収入がほとんど・あるいはまったくない場合、離婚をするとたちまち今後の生活費に困るというケースがあります。また、一方が病気のため全く働けないという場合も、同様の状況に陥ることになります。

 このような場合であっても、一旦夫婦が離婚をしてしまうと、一方(収入が多い配偶者)が他方(収入が少ない配偶者)に対して負っている、婚姻費用分担義務、すなわち生活費を支払う義務はなくなってしまうことになります。ですから、たとえ一方が比較的年齢が高い、病気などにより就職による収入を得ることが難しくても、原則として他方に離婚後も生活費を支払ったり、治療費を負担する義務が生じるわけではありません。

 もっとも、収入が少ない配偶者が年金受給開始年齢に達しているのであれば、年金分割により現在受け取っている年金額より多い金額を受け取ることが出来るでしょうから、さほど問題は起きないと思います。

 問題は、慰謝料が高額に受け取れるなど、まとまったお金を受け取れるあてがなく、なおかつ年金受給まで期間がある場合です。このような場合には、他方に経済的なゆとりがある場合、今後の生活保障の意味合いから、他方の離婚後の生活費などを負担させることがあります(扶養的財産分与といいます)。その場合は、現在あるプラスの財産の分与よりさらに上乗せで、一定額のお金の負担を一方が求められることがあります。

 また、夫婦の間で離婚後も一方が他方に生活費などを支払うという財産分与ないし贈与の合意をすることも考えられます。支払う側と話合いがつけば、他方が亡くなるまで毎月一定額のお金を支払ってもらうこともできます。

 ただ、この場合は、離婚までの双方の収入に応じて決める、婚姻費用(生活費)や養育費の支払とは異なり、双方の収入とは関係なく決められることもありえます。その場合は、婚姻費用の減額請求のように、当初金額を決めた時点と、収入状況などが変わり事情が変更したからといって、直ちに金額を変えてほしいと求められるものではないので注意が必要です。特に、他方が亡くなるまでの支払となると、いつになるのか分からないことから、無理のない範囲で金額を決める、場合によっては事情が変わったときには別途協議する、といった規定を設けておくことも必要でしょう。

 

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